健康ブームが続く中で、食べ物の栄養価や薬効に関する情報があふれています。その渦の中で、私が気になるのは、それらをどういう基準で取捨選択するかということです。もちろん中にはよい情報やノウハウもたくさんあり、取り入れていけばよいものもあります。けれども、自分の確かなフレームをもっていないと、次々とやってくる波に飲まれてしまいそうになりませんか?
◆カラダは土地と切り離せない◆
食養生の考え方に「身土不ニ」という言葉があります。「カラダは、環境(土地)と切り離せない」という意味で、「自分が長く暮らしている土地で生育された食べ物を食べることが、カラダによい」という考え方を示しています。昔の人は、「1里四方のものを食べれば健康でいられる」というふうに言い伝えていたそうです。
熱帯地域で暮らす人は、汗をよくかくことで暑気を払います。そしてそういう土地には、水分を補給してくれる果物や野菜が多く生育します。反対に寒冷地では、水分の多い果物や野菜は少なく、人々は、脂肪を貯える木の実、また牛・豚などの家畜に牧草を食べさせて、その肉や乳を食べて栄養をとってきました。
四季のある日本では、折々に旬の食べ物があり、私たちのカラダが健やかに営む手助けをしてくれています。その土地で暮らす人に必要な食べ物が、その土地に恵みとして与えられているのです。
最近スローフード運動の中で「地産地消」という言葉をよく聞きますのが、同じような意味だと言えるでしょう。
◆日本の食事は、本当に豊か?◆
生産技術や物流手段が向上し、現代の日本のスーパーマーケットでは、冬場でも遠い南国から運ばれてきた色とりどりのトロピカルフルーツがたくさん売られています。それらのトロピカルフルーツは、β-カロチンが多いもの、色素リコピンが含まれるものなど、いろいろと薬効成分がうたわれます。
とはいえ、真冬の寒い時期に、熱帯地域が原産のトロピカルフルーツを毎日せっせと食べてよいのかしら??? 内臓を冷やし、風邪を引きやすくなってしまうのではないでしょうか? トロピカルフルーツがいけないのではなく、食べ方だと思うのです。私も、たまにトロピカルフルーツは食べることはありますが、それは、パーティなどのハレの日、暑い夏などで、日常的ではありません。
いつでも、何でも手に入る。確かに日本では、食べ物の量は豊かです。でも食糧自給率は約4割りにすぎず、自分たちの食べ物を海外の国に頼り切っています。その一方で、私たち生活者の欲求は尽きることなく新しいトレンドを追い、飽きられたものはどんどん捨てられていく。そして旬や食べ物作りの知恵や技などの大切な伝統食文化まで失って行く。そんな私たちの心や暮らし方は、とても豊かとはいいがたいものです。日本人が長い歴史の中で育んできた食文化を、改めて見直す必要があると思います。
「身土不ニ」についてもう少し知りたい方は、「身土不ニを考える」という本は、わかりやすくておすすめです。
島田彰夫 著 無明舎出版
■関連リンク
旬の食べ物の力(食と健康)
素食=日本の伝統食(おいしい健康倶楽部)
農産物貿易と食料自給率(お米データベース)
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