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就活を左右する「3つの課題」

絶対に3年生からでは間に合わない。それに早くから始めておけばじっくりできる。

「3つの問」の答えを見つけることは、3年生からでは時間不足。早くから始めておけば就職活動に焦らず取り組める

就職活動が始まる前に、また大学院進学をする前に、大学時代にしておくべきことは3つある。記事「自己分析」でも述べた、自分の将来を意思決定する指針や手掛かりを得ること、すなわちマサチューセッツ工科大学のエドガー・シャイン教授が定義した「3つの問い」への答えを考えることだ。

  1. 何ができるか?
    能力・才能・できること。何が得意か? 大学時代に何を身につけたか?
  2. 何をやりたいか?
    動機・欲求・好きなこと。何をやっているときに時間を忘れるくらい没頭できるか?
  3. 何をすべきか?
    価値観・信条・こだわりなど。何をやっているときに意味を感じ、社会に役立っていると実感できるか?
    ※出典:エドガー・シャイン(著)、金井壽宏(翻訳)「キャリア・アンカー—自分のほんとうの価値を発見しよう」より加筆

この「シャインの3つの問い」の答えを言葉にできなくて、就職活動中の先輩たちは窮地に陥っている。

そりゃそうだ。できることがなければ自己PRを作ることはできないし、やりたいことがわからなければ、志望企業は見つからない。さらに何をすべきかわからなければ働くこと自体に意欲がわかないだろう。果てしない海を目の前にして、燃料がなかったり、地図やコンパスがなかったり、そもそも旅立つ動機さえなかったりすれば、航海がうまくいくはずもない。

ところが残念なことに、多くの学生がこの3つの答えを就職活動が始まってから探している。たった数カ月で簡単に答えが出るほど、君の将来は軽くないはずだ。もちろん、大学に入学してすぐに就職を意識するのは早すぎると思う。

例えば1つめの問い「何ができるか?」はそんなに簡単にできるようにはなれない。また、2つめの問い「何をやりたいか?」は「やってみなければわからない」以上、やって見ることを検討しなければならない。そして3つのめの問い「何をすべきか?」は「やってみなければわからない」上に、さらにその背景(企業文化など)も理解しなければ答えは見えない。

いずれも短時間で答えが出ない課題だからこそ、低学年のうちに自分の将来を意思決定する指針や手掛かりを得ることが重要なのだ。

1.将来働くために必要な力を身につける

この力を身につけるには何カ月もかかる。就職活動が始まってからでは絶対に間に合わない。ドラゴンクエストに例えれば、武器も防具も身につけずに戦場に出るようなものだ。

ドラゴンクエストに例えれば、武器も防具も身につけずに戦場に出るようなものだ

将来働くために必要な力とは何か。そしてその力を身につけるためにするべきことは何かについては、記事「社会で働く上で必要な力」で詳しく述べる。









2.将来やりたいことの候補を探しておく

「やりたいこと」を考えても意味が無い。やりたいことを悩んでも、やったことが無い以上、全て推測に過ぎない。親の職業か、アルバイト経験でも無い限り、断定なんて不可能に近い。

やりたいことを悩んでも、やったことが無い以上、全て推測に過ぎない。親の職業か、アルバイト経験でも無い限り、断定なんて不可能に近い

やりたいことを考える。きっとたくさんの就職本にも、就職ガイダンスでも語られる作業である。私はこの「やりたいこと」という言葉に、いつも違和感を感じている。

バブル崩壊前の終身雇用制・年功序列制時代には、「やりたいこと探し」は有意だった。右肩上がりの高度成長時代には、変化も少なく今までのやり方を踏襲していればよかった。先輩の背中をみて育っていけばよかった。そのため「やりたいこと」はある程度想像できたし、準備することもできたのだ。

でも今は違う。職人や古典芸能などを除き、人口動態の変化や経済のグローバル化、そして技術革新が進行する社会において、業種も職種も変化し複雑になっている。そのため、社会人の誰もが、自分の仕事を一言で語れないほど複雑になってしまった。

例えば営業といっても、会社によってその形態は全く違う。企画やコンサルティングも然り。そもそも専門職採用でない限り、君がやりたい部署に配属されるかもわからないし、配属されても半年や1年で異動することもありえる。結局、「やりたいこと」という切り口で志望企業を探すことはナンセンスなのだ。下手すれば、勤務地や従業員数、上場/非上場、知名度にこだわることも危うい。入社してから突然、社名や親会社さえも変わってしまうかもしれないのだから。

明日何があるかのかさえ、予想することは難しくなった時代。よって現段階の君が考える「やりたいこと」にこだわることは、絵に描いた餅のように、意味をほとんど成さないのだ。

視点を変えてみよう。そもそも君自身がやりたいことが変わる可能性もある。なぜならば、その仕事をアルバイトなどで経験しているならまだしも、していないのであれば、結局やってみないとその仕事がやりたいことなのかわからないからだ。逆に意図せずやらされた仕事の方が、君にとってのやりたいことになる可能性もある。極論すれば、内定を取ってから、その企業でやりたいことを考えた方が現実的だ。

だから、やりたいことを考えるのはほとんど意味がない。やりたいことを考えるのではなく、企業を知ってから、その企業の仕事がやりたいことなのかを検討したほうがずっと効率的だ。

では、企業を知るにはどうすればいいのか。答えは「行動する」一言に尽きる。いくつか例を書いておく。

1.意図した出来事
授業やサークル、海外旅行、留学、本、映画、アルバイト、セミナー、インターンシップなど。いずれもお金や時間は必要だが、ある程度自らの意思で自在に作ることができる出来事のことを指す。

普段やっていることだと思うなかれ。普段やっていることなら、それは意図した出来事ではない。普段やっていることを普段通りしても新しい知見は得られない。意図して質問したり、行動したりすることだ。

例えば、授業なら授業で出てきた仕事の話を詳しく調べてみたり、キャリア関連の授業を履修してみる。サークルなら就職活動を終えた先輩に就職活動の話を聴いてみる。海外旅行なら渡航先で働いている人(例えばホテルのスタッフなど)に仕事の話を聴いてみる。留学もフリーの時間を使って現地で働いている人と語学の練習も兼ねて話してみる。本や映画もストーリーの中で出てきた仕事を深く調べてみる。バイト先にも必ず社会人がいるので仕事の話を聴くことできる。セミナーもどうせなら仕事をテーマにしたものに参加してみる。

手を伸ばさなければ届かなかったことに、積極的に手を伸ばしてみるのだ。行動1つ1つは確かに大したことではないし、簡単にはやりたいことは見つからない。しかし積み重ねれば、やりたいことに出会う可能性は格段に上がるはずだ。

2.人との出会い
いつも同じ人と会っていても、新しい知見は得られない。あえて違う人と出会って話す機会を意識的に作り出すことが大切となる。これも日常生活への姿勢をアレンジすることで、その可能性は高まる。

普段の授業やサークル、アルバイトであれば、まだ話したことがない人に積極的に話しかけてみる。海外旅行や留学なら初めて出会う人ばかりだから話しかける人を増やす。本や映画ならその作者や登場人物を詳しく調べて、可能であれば講演会で話を聴く機会を探す。セミナーやインターンシップも初めて出会う人ばかりだから、セミナーなら隣の人と話してみる、インターンシップなら隣の学生はもとより社員にどんどん話しかけてみる。

つまり、君が体験していない仕事のことを体験した人の話を聴くことで、もしかしたら「自分もやってみよう」と思うかもしれない(専門用語で「代理強化」と呼ぶ)。また、自分の夢を曖昧でも語ることで具体的アドバイスがもらえるかもしれない。結果、やりたいことに出会う可能性は格段に上がるはずだ。

3.不意の出来事
意図せず不意に起こった出来事は、商店街のくじ引きでハワイ旅行が当るなど幸運な出来事もあれば、交通事故や病気、身内の死など不運な出来事もある。どちらかと言えば不運なことが多い気がする。しかし、その不運を逆手に、その出来事を新しい未知なる経験として、その経験からヒントが得られることもある。

例えば、交通事故や病気なら、入院している間に交通事故に関わる裁判のこと、自分の病気のことを深く知ることができる。本が読めるなら、この機会を逃すものかとアマゾンで本を買って読みまくればいい。身内の死も悲しむだけでなく、その死について深く考え、まだ生きている自分にどう活かすのかを思考を巡らせるのもいいだろう。そんな深刻な出来事じゃなくても、例えば電車を乗り過ごしたなら、一度も降りたことがない駅で降りてみて散歩してもいい。車が壊れたなら修理屋さんに持っていって修理屋さんに仕事の話を聴いてみてもいい。

不意の出来事も考え方・捉え方次第で、やりたいことに出会う可能性は格段に上がるはずだ。

3.将来働く意味(価値観)を考えておく

自分がやりたいことの先にある、自分がやったことがどのように社会に貢献しているのかもひっくるめて、仕事を捉えてみよう。

自分がやりたいことの先にある、自分がやったことがどのように社会に貢献しているのかもひっくるめて、仕事を捉えてみよう

就職活動中の学生が、考え抜いた上での志望動機によく抜けているのが、この「働く意味(価値観)」である。

詳しくは記事「大学生にとっての働くことの意味」で述べたが、ここではシンプルに考えてどうやって将来働く意味(価値観)を言葉にするのか、どうやって共感できる価値観を持つ企業を探せばいいのかを述べてみる。

下の図は、社員と会社と顧客(社会)との繋がりを図にしたものだ。社員は労働の対価として賃金を得る。会社は商品・サービスを提供することで代金を得る。よって、社員の労働は会社が利益を得るために行うものである。利益がなければ賃金が払えないのだから。すると当然、社員の労働は結局は顧客(社会)のニーズに基づくものであり、言い換えれば社員の労働は社会に貢献しなければならないのである。公務員であれば納税者に対し公的サービスをする義務があるのだ。
個人と企業と社会との関係

 

にもかかわらず、ついつい自分の仕事のやりがいだけを見てしまう学生がいる。それだけだと、社会では働くことはできない。社会とつながっている感覚が必須なのだ。

この「社会に貢献する意識」を学生時代にどう認識すればいいのか。ボランティア活動を通して身につける方法(サービス・ラーニング)もあるが、ここでは企業の経営理念を研究する方法を述べておく。

まず、気になる企業の「経営理念」を読んでみよう。経営理念とは、企業の内部に対しては経営の指導原理として、組織全体を一体化させるという大きな役割を持つ。そしてその一方で外部に対しては、その企業の存在意義を知らしめるという、いわば企業の「信念の表明」のような意味を持っている(経営理念継承研究会「経営理念 継承と伝播の経営人類学的研究」より)。

つまり、経営理念にはその企業ならではの「社会貢献」が記述されているはずだ。その姿勢に共感できるかで判断することができる。なお、経営理念に類似する言葉としては、ミッション、ビジョン、社是、社訓、社意、社魂、信条、経営方針、行動指針、○○精神、○○の誓い、企業憲章、クレド、フィソロフィー、モットー、スローガン、標語、使命、綱領などが挙げられる。

例えば、スターバックス コーヒー ジャパン株式会社の経営理念は「One person, one cup, and one neighborhood at a time」。つまり「ひとりのお客様、1杯のコーヒー、そして1つのコミュニティから」である。1人ひとりのお客様に一期一会の気持ちで接し、お客さまにとってのサードプレイス(職場や学校と自宅の間の第三の居場所)として自覚しようという価値観だ。この理念に共感し、お客さま1人ひとりに対し心を込めたコーヒーと体験を提供できるか、それが君の働く価値観にフィットするかが大切なのだ。

例えば、株式会社東急ハンズの経営理念は「ここは、ヒント・マーケット」。つまりできあいの商品を売るのではなく、全フロアが何かを作りたい人、始めたい人にとっての「きっかけ売り場」であり「発想の一歩目」だという価値観だ。この気持ちで自分からこの理念に共感し、日々幅広く積極的に興味や知識を広げながら、お客様に一人ひとりに対し心を込めた提案ができるか、それが君の働く価値観にフィットするかが大切なのだ。

最後に、その経営理念に共感できるかを読むだけでなく体感するにはどうしたらいよいだろうか。アルバイトやインターンシップで体験するのがベストだが、困難であればその企業で働いている人に取材するのがよいだろう(OB・OG訪問)。仕事へのやりがいや辛さを聞くことで、共感できるかどうかはおおよそ判断できるはずだ。


以上、「シャインの3つの問い」の答えを探す方法を記してきた。もう気付いたと思うが、かなり時間と手間がかかる作業である。3年生からでは到底間に合わないことが理解できたはずだ。よってできるだけ低年次から、意識して行動するようにしよう。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。