【1】
アレックス副社長は、株主代表の2人の社外取締役から自分の管轄下にある3つの子会社の売却を命じられる。
この3社は、彼の指導でボトルネックを発見すことで、著しく在庫を減らし、生産性を向上させてきた。現在も業績改善の途中にある。
しかし社外取締役たちは、これを売ればグループ全体のキャッシュ・フローが改善、株価が上がると踏んだ。こうして株主の利益を確保したいのだ。
彼はこの売却を阻止するために、短期間で3社の業績を大幅に改善する決意する。しかし競争激化から、価格は低下傾向にあり、利益は減る一方だ。
こんな状況下、短期間に利益を増やし、社外取締役に「売却は会社にとって不利だ」と思わせなくてはならないのだ。
【2】
社内のコストを削減しても、在庫を減らしても、価格が低下している現状ではたいした効果はない。
収益の減少をとめるには、価格を維持するか、販売を拡大するかのどちらだ。しかし、ライバルがどんどん値下げする中、どうすればいいのか。
アレックスは、この問題の解決には現場に詳しい子会社の経営者たちの知恵を引き出すしかないと考えた。
そこで、彼らに新しい思考方法を教え、問題の解決策を見つけることにした。
【3】
複雑な問題に直面したら「思考プロセス」を使うことだ。これは問題解決のために「何を」「何に」「どのように」変えれば良いかを教えてくれる。
まず、頭の中で考えたり、口で説明したりするだけでは、問題の解釈があいまいになり、システマティックな検討ができない。
そこで「雲」を使う。これは四角形の枠である。問題を構成するさまざまな要素を「雲」として書き出し、その因果関係を線で結んでいくのだ。
でき上がった図は、樹木型になる。こうして問題を図示すると、内容を整理しながら、思考を進めることができる。
次第に「どの問題を解決するのが最も効率的か」が明らかになる。それがはっきりすれば、解決のためのアイデアが出てくるようになる。
【4】
子会社の一つ、印刷会社の社長ピートは、アレックスの思考法を用い、安い値段で売るかわりに一度に大量に買わせるライバル企業に勝つ方法を考えた。
彼らの顧客は、在庫を抱えて資金繰りが悪化している。これを解決すれば、売れるはずだ。しかし小ロット受注・生産では採算に合わない。
そこで注文だけ多くしてもらい、納入は小ロットにする方法を思いついた。大量受注すれば、実際に印刷しなくても売上げを安定させることができる。
また生産計画が立てやすい。相手への納品に合わせて印刷するのだから、こちらの在庫を抱える必要もない。
顧客は在庫を減らすことができ、資金繰りが楽になる。その分、支払を早くしてもらえば、自社のキャッシュ・フローも改善できる。
【5】
次は、高圧蒸気製造装置の生産・販売の会社だ。ここでは営業担当者を集め、売上げを増大させ、利益をあげる方法を討議した。
やはり、ライバルとの競争で、値段を下げ、それが赤字の原因となっている。皆が、「顧客を有利にすれば自社が不利になる」と思い込んでいる。
アレックスは、思考プロセスを使って、両者有利な方法を考えだそうとする。
ついに装置でなく、高圧蒸気そのものを売るという考えに到達する。顧客は設備投資が不要になる。当社はパーツの管理もメンテも都合よく行える。
結局、グループ3社は売却されてしまう。だが、それは予想外の高値であった。彼らは、会社でなくすぐれたコンセプトを売ったのだ。
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