そろそろ独立開業――と考えているあなた。失うものの重さはきちんと量っていますか

ミニカー「チョロQ」をネット販売する『トラオコムミニカーズ』の経営者飯沼さんは、もともと玩具が好きで、地方の玩具屋を回っては都心では見つからない“名品”を買い漁っていました。あるときそれをプレミア付きで売ることを思いつきました。これがあたり、現在100万円を超える月商をあげています。在庫は約4000台、月1000台は売れるそうです。さて、飯沼さんのようなすでに成功している週末起業家には、どんなアドバイスが必要でしょうか。私が助言したいのは2点。どのように既存のビジネスを発展させればよいのか、そしてどのタイミングで独立開業したらよいのかです。そこで、今回は飯沼さんの事例をもとに、これから必要な事業展開について考えてゆきます。すでに起業している人は、ぜひ参考になさってみてください。

週末起業家への処方箋


彼のようにすでに週末起業で成功されている方に、今さらその立ち上げ方を解説する必要はありません。あとは、その事業をどんどん発展させればいいのです。その際、ビジネスの3つの要素、すなわち、誰に、何を、どうやって売るのかを整理してみると、発展の道筋が見えてきます。たとえば、トラオコムさんのケースであれば、現状を分析すると以下のようになります。

・誰に…“チョロQのマニアに”販売している
・何を…“プレミアムチョロQを” 販売している
・どうやって…“インターネットで” 販売している

もし、このトラオコムさんがビジネスの発展を考えるなら、以上の要素のどれか一つに新しいモノを加えてみます。
たとえば、次のような選択肢が考えられます。

・誰に…“チョロQ初心者に”売ってみる
・何を…“トミカを”売ってみる
・どうやって…“店舗で”売ってみる

このように、既存のビジネスの要素の一つに、何か新しいモノを一つ加えるだけで、既存のビジネスを発展させることができるはずです。このような手順を踏むことで、いきなり既存のビジネスと上述の3要素がすべて異なるビジネスに手を出すよりも、よほど効果的かつ低リスクにビジネスを発展させることができます。

そしてもう一つ、週末起業家からの相談で多いのが退職、すなわち独立開業のタイミングをいつにするかということです。週末起業で成功し、給与と同額の収入を得るようになると、はじめた当初は「定年退職まで2足のわらじでいく」と考えていた人も独立開業を考えるようになります。

このような相談をうけた場合、「退職によって生まれる時間を使って、退職によって失ったお金を稼げるかどうか」が一つの判断基準になります。もちろんこの判断は、ロングスパンで下す必要があります。つまり「自分がサラリーマンを続けた場合、今から定年退職まで稼げる金額」と「独立開業してこれから稼げる金額」を比較するのです。これは長期の事業予測をたてることですから、容易ではありません。また、いくら考えても確証を得ることはできません。最終的にリスクをとるかどうかの判断になります。

独立前にできるリスクヘッジ


もし、できるだけリスクヘッジをしてから独立したいなら、不動産投資をしておくのも一つのアイデアです。不動産投資は独立後の生活を防衛するためのリスクヘッジとして有効ですが、退職前に手を打っておく必要があります。なぜなら、会社を辞めて独立すると銀行からの融資が受けられなくなるからです。

どんなに事業がうまくいっていても、独立当初は銀行からの融資はうけられないと思っておいたほうが無難です。不動産なら担保があるので銀行にはリスクがないように思えますが、すでにたくさんの不良債権を抱え、その処理に悩んでいる銀行には、不動産を担保とってもお金は貸したくないようです。

なお、すでに独立開業した人が不動産投資を考えるなら、国民生活金融公庫があります。これは本来、銀行などで事業資金の融資を断られたり、貸しはがしにあったりした事業者に融資を実行してくれる公的機関です。不動産賃貸業も立派な事業ですから、事業計画を提出すれば、不動産購入資金も、その担保価値に応じて融資してくれます。独立開業後に不動産投資を考えている人は、相談してみるとよいでしょう。

銀行からの融資は、自宅を購入する際にも必要ですから、自宅を購入しておくことも、独立後のリスクヘッジになりえますが、こちらもサラリーマンをやめると融資をうけることが難しくなります。購入を考えているなら、購入してから独立開業をしたほうがよいでしょう。

以上、独立のタイミングと、独立後のリスクヘッジの方法を、経済合理的な観点から考えてみました。

しかし、会社を辞めるかどうかの判断は、経済面だけで判断できるものでもありません。自分の価値観や人生観と照らし合わせて、総合的に判断されるべきものです。多少収入は減っても、多少のリスクはあっても、それが許容範囲であり、ある程度の勝算があるなら思い切って独立するという判断もありえます。

1人でも多くの方に、経済的にも、精神的にも会社に依存しない、真の大人、起業家を目指していただきたいと願っています。詳しくは「週末起業チュートリアル」(筑摩書房)も参照してください。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。