3.トランジションとドリフト(=人生においての今を考える)
「キャリアをデザインするとは、節目(移行期)をデザインすることである。節目のときでさえデザインするという発想をもし持たなかったら、一生ドリフトしたままになるかもしれない。(逆に)節目さえしっかりデザインされていれば、それ以外のとき(移行期と移行期の間の安定期)はドリフトしていい。それどころか、キャリアを歩む上での発想や行動のレパートリーを豊かにするうえで、しばしばドリフトしたほうがいいことさえある。」(出典:『働くひとのためのキャリア・デザイン』金井壽宏)旅に例えるとわかりやすいので、
「東京在住の学生が、京都への2泊3日の一人旅に出る。手配は自分でした」
として、以下の文章を読んでみてください。
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当日の朝、新幹線の切符を握り締め、時間通りに駅に着いた。予約した「のぞみ号」がホームに着く。自分の席を探し、荷物を棚に載せ、席に着いた。そして出発。列車は動き出す。品川や新横浜を過ぎると、少し景色がのどかになってくる。車内販売のカートが来たのでコーヒーを頼む。景色を眺めながらコーヒーをすすって、一息つく。ふぅ。あとは目的地に着くまで、ゆっくりできる。さて、京都に着いたらまずどこへ行こうかな。
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このように、旅には「緊張している時」と「そうでない時」が混在している。
例えば、列車や飛行機に乗る時や、旅館やホテルにチェックイン・チェックアウトする時は緊張しているでしょう。
例えば、目的地に着くまでの列車や飛行機の中、旅館やホテルにチェックインしたあとの食事までの空き時間は、とても優雅だし、いろいろ考えを拡げることができて、とても楽しい。
さて、なぜ前者は緊張しているのでしょうか? それは「失敗するとリカバリーが大変だから」。新幹線や飛行機に乗り遅れたら致命的だ。旅館やホテルのチェックインだって、ちゃんと予約されていなかったら、旅は路頭に迷う。そりゃあ、かなりの神経を使うはず。その分かなり後者がリラックスしている理由はわかるよね。失敗する要素が無いから。時間に追われていないから。重い荷物を持っていないから。つまり、「自由だから」。
さて、みなさんの人生を旅に例えたなら、みなさんは今、前者ですか?後者ですか?
もちろん「前者」だよね。だって、就職先を探して決める作業をしているのですから。この時期を「トランジション(過渡期・転換期)」と呼びます。逆に後者を「ドリフト(漂流)」と呼びます。
とりあえず今は、緊張の連続の時期なんだ。そもそも、こんな大きな「トランジション」なんて初体験なんだよ。旅に例えれば始めて海外旅行に行く時の気分かな。とりあえず目的地に着くためには、貯金もしないといけないし、鞄も買わなくちゃ。そうそう、海外ならパスポートと国によってはビザも必要だ。おおっと席の予約しないといけない。そして当日、交通手段に乗り遅れるわけにいかないし、もし乗り遅れたら違う便を手配しなくちゃいけない。
でも、この「トランジション」を突破すれば、「ドリフト」が待っているんだ。もちろん仕事を覚えるまでは、気ままに「ドリフト」できないと思うけど、とにかく「トランジション」のように、慌てふためくことはなくなる。
つまり、「今は人生の中で最も緊張して忙しい時期のひとつ」だということをまず認識してください。そして、「あとで有意義なヒトトキが待っている」ことを意識してください。旅と同じく、旅先に着けばやりたいことがたくさんあるはずだ。だから何としてでも「辿り着かなくてはならない」。「何とかめげずに頑張ろう!」なんて弱音を吐くようなレベルの問題ではないのです。
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「タイムシフティング」
「ポジティブシンキング」
「トランジションとドリフト」
どの方法を使ってもいい。就職活動のファイトを絶対に絶やさないで下さい。
頑張るんじゃないよ。
だって、そもそも旅は「頑張って行くものじゃない」。
旅に出ることを決めたのは、そもそも「あなた自身」なんだから。