「白い嘘」にまみれた求人広告は、早期退職者を増やしてしまう
詳しくはPFP新書「働くひとのためのキャリア・デザイン」(金井 壽宏著) |
このキャッチフレーズ、確かに嘘はついていない。でも、過酷な労働条件に全く触れていない。この「大切なことを故意に語らない」ことを、金井壽宏・神戸大学大学院教授は「白い嘘」と呼んでいる(逆に「安全な旅」など、人を騙すことを意図した嘘を「黒い嘘」と呼ぶ)。
きっと「白い嘘」広告なら、5000人を上回る求人があったであろう。しかし、数が増えれば触れるほど、面接など選考のコストはかさむし、面接の時に「えー!そんなやばい仕事は嫌だ!」と断られたら、お互い時間の無駄だ。さらにその危険を知らずに旅に参加していたら、きっと数日で逃げ出していただろう。
当時、南極横断は前人未到。決死の覚悟が必要だ。だからこそシャクルトンは、
- 危険極まりない旅であることを予め伝え、そのリスクをリアルに理解してもらう。
- それでもこの旅を成し遂げて見せるぞ!という覚悟を持った人だけに面接に来てもらう。
- そしてその中からさらに素晴らしい人材を厳選する。
以上の手法で当時考えられる最高のメンバーを集めたのだ。結果、過酷な旅を乗り越えることができたことは、言うまでもないだろう。
前述したグリーンアテンダントの広告「決して楽ではありませんが」も、南極探検隊の広告と同様、少なくとも事実を伝えようとしている。このフレーズが有ると無しでは大違いだ。無ければ応募数は増えるかもしれない。でも「グリーンアテンダント」という美しい響きの言葉だけでイメージして受験し、幸か不幸か採用され、結果仕事をしたところイメージと現実との差にショックして辞めてしまったら、本末転倒だ。
逆に「そうか、辛い仕事なんだ。でも、だからこそやりがいもあるんじゃないかな!」と受け止めて受験し入社した人なら、きっと、いきいきと仕事を続けているだろう。
求人広告のフレーズ一つで、応募する人、採用された人、そして企業自身にとっても、いい影響も悪い影響も与えられることを、理解してほしい。そして特に学生のみなさんは、簡単にその言葉だけを信用しないようにして欲しいと思う。
※次のページで、求人広告自体が、会社選択の一つのチェックポイントになることを知ろう!