原則は「給与」として課税されます!が……
制服の支給から社宅、通勤手当……「フリンジ・ベネフィット」は探せば結構あるものなのです。 |
ちょっと昔の話になりますが、「大阪市の職員に対して配った制服に対して所得税がかけられた」というニュースがありました。市が配ったものは「制服」という名目の「スーツ」と国税局に指摘され、スーツは職員に対するボーナスだから、その分の所得税を納めなさい、と指摘された事件でした。
このニュースからも分かるように、「フリンジ・ベネフィット」は利益を受ける社員に対する給与として、原則的には課税されるべきもの、として所得税法に定められています。
しかしながら、実質はそのほとんどが様々な法令・通達により「社会通念上認められるもの」は「非課税」として取り扱われています(「非課税」とできる要件等の詳細については、今後別の機会にご紹介します)。
みなさんも、社会保険料の半額を会社で負担してもらうのはもちろん、その他通勤手当等、色々な利益を受けているとは思いますが、基本的には課税対象になっていないはずです。
「会社で働いているのだから、これくらい当たり前だよ!」とお考えの方もいらっしゃるかもしれません。確かに、「法定福利費」や「福利厚生費」って普段「経理の仕事」をしているときは、何も考えずに普通に経費として処理していることが多いように思います。
「フリンジ・ベネフィット」多いほどラッキー?
国家の運営費は税金がキホン。支払う税金は少ないに越したことはないけれど……なかなか難しいところです。 |
基本的に社会通念上妥当であると認められたフリンジ・ベネフィット。これについては、利益を受ける個人には所得税がかかりませんし、利益を与える会社にとっても経費となりますので、その分、法人税の負担を軽減することが出来ます。ですから、これを多くしたほうが個人も会社もお互いハッピーで良いような気もしてきます。
しかしながら、世の中、そんなに上手い話はありません。フリンジ・ベネフィットにもいくつか問題点があると言われています。
■まず、「公平性」の問題があります。
前のページでも少し触れた「公務員宿舎」の件がなぜ、ニュースになるのかを考えてみればわかるでしょう。あんなに凄い社宅、作れるものならばどんな会社でも用意したいはず。しかしながら資金その他の条件面でなかなかそうはいかないのが現実。福利厚生を「できる会社」と「できない会社」があり、「できる会社」の社員の方は経済的利益を受けているにも拘らず、その利益に対して税金もかからないという格差が生じてしまいます。
また、同じ公務員でもみんなが凄い宿舎に住んでいるかといえば、そうではないはず。一部の人が凄い宿舎に住んで、その他の人はそれなりの宿舎、というように、同じ組織の中でも格差が生じることとなります。
■次に、「税源が失われる」という問題があります
フリンジ・ベネフィットは本来課税されるべきものであるのに、一定の要件を満たすものについては課税されません。企業や国等、雇用する立場の人が給与を増やす代わりに福利厚生を充実させた場合、その分、国としては課税する機会を失うわけです。
日本はご存知のとおり、残念ながら石油等の資源がバンバン出るわけでもないので、税金が頼りの財政構造です。税収が少なくなれば不足分を「増税」で賄うことになります。
つまり、あまり行きすぎた福利厚生は、巡り巡って自分の身に「増税」として帰ってくる可能性があるのです。
福利厚生は、社員のやる気を起こし、会社に利益をもたらし、その利益から税収が増え国も豊かにしてくれるという効果があります。でも、あまりやりすぎると逆に格差をもたらし、社員のやる気をそいだ上に増税が待っている。
福利厚生は単に「やればやるほどよい」というのではなく、目的を持って、必要なものについて行うようにしないと、その効果が上手く発揮できません。
何事も「ほどほど」がよい、ということでしょうか。
【関連リンク】
・「給与等とされる経済的利益の評価」(国税庁)
ちょっと分かりづらいですが、フリンジ・ベネフィットの取扱いや評価方法について書いてあります。社宅家賃の算定方法(一般企業向け)も載っていますよ。