「費用収益対応の原則」を思い出そう!
まず、「仕掛品」について深くご説明する前に、ひとつ復習しておいていただきたいものがあります。それは、「費用収益対応の原則」という決まり。この原則については、以前の記事でもご紹介しましたが、特に今回の場合に当てはめると、「会社の利益の計算上、発生した費用のうち『売上』に対応する部分のみを『原価』として計上してください」ということです。
ちなみに、発生した費用のうち、『原価』として計上できなかった部分については「棚卸資産」として、資産に計上することになります。
ケーススタディ
では、復習も終わったところで次の例をもとに検討していくことにしましょう。当期だけ先に原価を計上し、次の期に売上を計上したのでは、このセミナーがどれだけ儲かったのかを正確に知ることができません。 |
セミナーを開催することを業務としているA社。セミナーのための会場代や通信のための費用を支払っていますが、そのセミナーを開催するのは決算日より後の予定です。
決算に際して、この会場代や通信費の処理はどうすればよいでしょうか?
■解答
会場代や通信費を「仕掛品」として資産計上する必要があります。
■考え方
●思考その1:売上計上のタイミングは?
収益計上のタイミングは、モノであれば、その「モノを引き渡した日」がそのタイミングとなります。
この考え方に当てはめてみると、セミナーに関する売上計上のタイミングは、「セミナーというサービスを実際に行った日」(来期)となります。
●思考その2:原価を売上に対応させる
セミナーに関する利益を正確に計算するためには、売上計上のタイミングと、これにかかった原価計上のタイミングをそろえる必要があります。
今回の決算上、会場代や通信費は「仕掛品」として資産に計上し、来期セミナーの売上計上のタイミングに合わせて、この「仕掛品」を原価として計上します。