貰ったチケットをオークションで売るのは?
取引先からプロ野球の観戦チケットをもらった会社員。残念ながら試合の日は都合が悪く、インターネットオークションに出品したら思わぬ高値で売れた。同僚に自慢すると「ダフ屋行為に当たるのでは」と注意されたが、大丈夫かな。
これは、2006年03月27日の日本経済新聞朝刊「リーガル3分間ゼミ」に掲載された事例です。
では、この行為が法的に「ダフ屋行為」にあたるのかと言えば、
法的には、「当たらない」が正解なのだそう。
ダフ屋行為とは、(1)不特定の人に転売する目的で公共の場所でチケットを購入したり(2)公共の場所で不特定の人にチケットを売ったり、売ろうとしてつきまとったりする行為のこと。都道府県が定める迷惑防止条例で禁止されている。
この場合、取引先にいただいたのだから「転売する目的でチケットを購入した」わけではないし、「ネットオークション」についても、「公共の場所とはいえない」という判例があるからです。
法律違反じゃなきゃいいの?
法的には問題なくても、私はこれはNGだと思ってます。
まず、この事実を、チケットを下さった取引先に言って、喜んでもらえるでしょうか?自分の会社に良い印象を持ってもらえると思いますか?
「先日いただいたチケット、都合が悪かったんでネットオークションで売っちゃいました。
意外に高く売れて、儲かりました。ありがとうございます!」
と言われて、あなたなら嬉しいですか?(まあ普通言いませんが…)
仕事の上とはいえ、お土産も、記念品も、贈り物も、「相手に喜んでもらいたい」という気持ちで選び、贈るもの。
最初から「高値で売って儲けてもらうこと」を目的で送ったならいざしらず(それはまた別の問題アリ…)、先方の気持ちに反します。法律はともかくマナー違反。
「だってムダにするのもったいないじゃん。黙っておけばいいだろ」
それでも、どこからバレるかわかりません。たとえばこの例のように、うっかり同僚に自慢したことが上司や取引先の耳に入るとか。
また、この事例では「取引先をがっかりさせる」ことはなかったかもしれませんが、同僚に悪印象を持たれています。
「ダフ屋行為にあたるのでは」と注意した同僚は、多分、カレが法律違反を犯しているかもしれないことを心配しているのではなく、カレの行為を非難しているワケです。
ちょっとしたいただきものは、いわば「役得」。
「役得」が周りに許され、認められるのは、仕事の内容や普段のがんばりに見合う程度だからこそ。
例え法的に問題なくても、やめておいた方が無難です。
「ローカルルール」を見極めよ
前頁で紹介した、
「社内規則で受領が禁止されているような場合」
というのは、何も特別なケースではありません。
例えば就業規則の「服務規程」「服務心得」などに、「取引先より金品の贈与を受けること、また要求することを禁ずる」などの表現で記載されていることは多いです。
まあ常識。なので、たとえこの項目があったとしても、「お菓子もらっちゃった!」程度のことが、厳重に禁じられていたり、問題になることは少ないでしょう。
ではどんなケースが問題になるのか。これはムズカシイトコです。
ネットオークションの例でも、「法的に問題ないんでしょ?みんなおおっぴらやってるよ」なんて会社もある…かもしれません。
就業規則に書かれてなくても、記念品の傘など、「ウチの部は忘年会まで、ビンゴの景品用に貯めとく決まりなのに…」という「ローカルルール」があるかも。
とにもかくにも、「会社によって違う」ということ。
転職してみたら、「今の会社と前の会社はゼンゼン違ってた!」ということも少なくありません。
昔から日本では、現金や品物を贈る習慣がありました。「贈答」とは「贈り」そして「答える」ものです。言いかえれば人と人との大切なコミュニケーションがそこで成り立ちます。贈答によって人と人との交流をさらに広げ、人間関係をスムーズに運べることができたら、これ以上の幸せはありません。
(「冠婚葬祭」ガイド記事 「贈ってはいけない?うっかり贈り物タブー」より)
「贈られること」、それに「答えること」は、本来良きことです。
それをトラブルの元にしないためには、法律がどうであれ、自分の会社のルールを知っておくことが大切です。