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配偶者控除と配偶者特別控除の違いとは?

年末調整の提出書類に「配偶者特別控除申告書」があります。パートなどで働いている方なら聞いたことのある「103万円の壁」。この壁を超えると「配偶者控除」の対象外となりますが、この壁を超えたら一気に控除がなくなるのではなく、なだらかに控除が減るのです。この「103万円の壁を超えたあとの控除」が「配偶者特別控除」です。配偶者控除と配偶者特別控除の違いを確認しましょう。

渋田 貴正

執筆者:渋田 貴正

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配偶者控除…103万円の壁・平成30年からは制度変更も

今回は、正社員で働いている夫のA夫さんと、パートで働いている妻のB子さんの夫婦を例に見ていきましょう。A夫さんには、給料以外の収入はないものとします。

B子さんはパートで働くにあたって、A夫さんが配偶者控除を受けるために「103万円の壁」を意識しています。

配偶者控除とは、年間の給料額面(手取りではありません)の合計が103万円以下の場合、配偶者側で38万円の所得控除が受けられるという制度です。

103万円には通勤手当は含めません。また、不動産収入など、ほかの所得があれば合算します。今回は話を簡単にするため、B子さんの収入はパートの給料のみとします。

B子さんが1月1日から12月31日の間に支払いを受ける給料額面を103万円以下であれば、A夫さんは勤め先の年末調整において、所得から38万円を引くことができます。仮にA夫さんに適用される所得税率が10%なら、3万8000円の所得税が軽減されます。さらに、住民税にも適用されますので、同様に10%の税率であれば、計7万6000円の税金が軽減されます。

また、B子さんは収入が103万円以下ならば、所得税は0円となります。

このように、配偶者控除を受けると、A夫さんの所得税は軽くなり、B子さんの所得税は0円になります。

ただし、平成30年分以後は、A夫さんの稼ぎ次第で注意を要します。
  • A夫さんの年収が1,120万円以下なら38万円
  • A夫さんの年収が1,120万円超1,170万円以下なら26万円
  • A夫さんの年収が1,170万円超1,220万円以下なら13万円

上記がA夫さんが受けられる配偶者控除の金額となります。この場合、B子さんの年収をどれだけ低く抑えても関係ありません。高所得者に対しては配偶者控除の適用が抑制されることになったのです。

なお、配偶者控除を受けるには、年末調整の際に「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」に配偶者の住所・氏名・見込みの所得・マイナンバーなどの情報を記載します。

配偶者特別控除…「141万円の壁」

103万円ぎりぎりで勤務時間を調整してきたB子さんですが、年末の繁忙期に働きすぎたため、年間収入が110万円になってしまいました。これでは103万円を超えているため、配偶者控除は受けられません。

それでは、A夫さんが受けられる控除が完全になくなるかというと、そうではありません。B子さんの給料が141万円に達するまでは、特別に控除を受けられるのです。これを配偶者特別控除といいます。

配偶者特別控除の金額は、以下の表の通りです。段階的に控除額が目減りしていき、141万円に達すると0円となります。

配偶者特別控除を受けるには、年末調整の際に「給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書」に、配偶者の住所・氏名・見込みの所得などの情報を記載します。配偶者特別控除を受ける場合、配偶者のマイナンバーは必要ありません。

■配偶者特別控除の控除額
配偶者の給料 配偶者特別控除の控除額
103万円を超え105万円未満 38万円
105万円以上110万円未満 36万円
110万円以上115万円未満 31万円
115万円以上120万円未満 26万円
120万円以上125万円未満 21万円
125万円以上130万円未満 16万円
130万円以上135万円未満 11万円
135万円以上140万円未満 6万円
140万円以上141万円未満 3万円
141万円以上 0円

B子さんの収入は110万円でしたので、A夫さんの配偶者特別控除の額は31万円です。この場合、先ほどと同じくA夫さんの所得税率、住民税率がともに10%とすれば、税金の軽減額は6万2,000円となります。税金の軽減額は1万4,000円少なくなっていますが、B子さんの収入が7万円アップしています。B子さん本人の所得税と住民税を考慮しても、世帯収入としては4万円程度アップするでしょう。

基本的には103万円にこだわらずに働いたほうが、世帯収入がアップすることが多いです。ただし、年収130万円(従業員501人以上の会社で週20時間以上働くなら年収106万円)を超えるようだと健康保険や厚生年金の加入義務が発生しますし、収入アップは労働時間もそれだけ長くなる可能性が高くなることを意味します。

世帯収入を最大にしつつ、社会保険料を払いたくないという場合は、月収10万円(従業員501人以上の会社で週20時間以上働くなら月収8.8万円)を目安にするとよいでしょう。

平成30年に配偶者特別控除も大改正される

平成30年、配偶者控除の改正とあわせて配偶者特別控除の改正も行われます。この改正によって、これまで配偶者控除の影に隠れて、あまり目立たなかった配偶者特別控除が主役になるかもしれません。

これまでB子さんの年収が103万円(厳密には、配偶者特別控除の金額は、配偶者の年収が103万円超105万円以下までは配偶者控除と同額なので105万円)を超えるとすぐに目減りが始まっていた配偶者特別控除ですが、平成30年からはB子さんの年収が150万円に達するまでは、配偶者控除と同じく、

  • A夫さんの年収が1,120万円以下なら38万円
  • A夫さんの年収が1,120万円超1,170万円以下なら26万円
  • A夫さんの年収が1,170万円超1,220万円以下なら13万円
が配偶者特別控除の金額となります。

つまり、控除の名前は変わっても、妻の年収150万円までは配偶者控除も配偶者特別控除も同額の控除を受けられるようになります(妻の年齢が70歳以上の場合、配偶者控除のみ金額が上乗せされます)。これが平成30年から新たにできる「150万円の壁」です。

社会保険の「130万円の壁」は残ったまま

B子さんの年収150万円までは控除の金額が変わらなくなるわけですが、もう一つ忘れてはならないのが、「130万円の壁」です。

社会保険の被扶養者の基準は「年収130万円以下」です。

所得税は毎年1月1日から12月31日の間に得た収入で判定するのに対し、社会保険は向こう1年間の見込み年収で判定するという違いはありますが、B子さんが毎年140万円の収入の見込みがある場合は、社会保険においてA夫さんの扶養に入ることはできません。保険料負担の増加とともに、健保組合を中心に扶養に入るための審査は厳しくなっています。

結局のところ、新たに「150万円の壁」ができても、「130万円の壁」を越えようとする方は少ないかもしれません。
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