愛媛県では基準を緩和し届出を促進
そんな中、愛媛県では2008年秋、「たまゆら火事」が起こる以前に、独自に「未届け有料老人ホームに対する届出指導要領」を策定していました。その内容はとても現状に即したものとなっています。まず、届出までの手順。
入居者数やサービスの有無、職員数などを尋ねる調査票を元に必要に応じて実地調査等を実施。愛媛県の「有料老人ホーム該当施設判断基準」をもとに、該当する施設に3ヶ月以内に届出を求めます。市町に対しては、要介護認定調査や特定高齢者等の認定過程、地域包括支援センターが収集した情報等から有料老人ホームと思われる施設の情報を集める、などの指示も書かれています。
私自身、認定調査員をしていたとき、複数の無届けホームでの調査経験がります。必ず要介護者のもとを訪れる認定調査員から情報を得るという指示は的を射ていると感じました。
さらに愛媛県は、以下のように有料老人ホームの設置運営指導指針の基準を緩和し、基準に満たない施設も「基準適合外施設」として、届出を受け付けるとしています。
- 居室面積、廊下幅の基準は満たさなくてよい。ただし、プライバシーに配慮し、適当な広さを確保
- 耐火・準耐火建築物でなくてよい。ただし、避難設備、警報設備、消火設備等事故・災害に対応するための設備・安全確保が必要
- 居室は原則個室。改修が困難な場合は、1室あたり4人以下。ただし、プライバシーに配慮し、適当な広さを確保
- 基準を満たしていない部分についての改善計画を策定。届出時に県へ提出
- 入居募集、契約時に入居志望者に対して基準を満たしていない部分を十分に説明
この「基準適合外施設」については、介護保険の特定施設入居者生活介護の指定は行わず、また、基準を満たしている有料老人ホームとは区別して、愛媛県のホームページで一覧表示するとしています。
非常にいい試みだと思うのですが、残念ながら、昨年、この届出指導要領を発表したあと、届出が増えるという動きはなかったとのこと。「たまゆら火事」以降の指導により、ようやく届け出たホームはあったそうです。
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