東京都が厚生労働省に緊急提案
2009年2月に起きた群馬県渋川市の無届け有料老人ホームの火事をきっかけに、厚生労働省は各都道府県に届け出促進と防火安全体制等の緊急点検を行うよう通知しました。これを受けて緊急点検を実施した東京都は、無届けホームの現行法での規制は困難と考え、5月18日、厚生労働省に対し、以下のような「有料老人ホーム(未届け等)の規制に関する法整備について」の緊急提案を行いました。- 届出を行っていない施設についても立ち入り調査に加え、改善勧告、命令等を行うことができるよう、法改正を行うこと。
- また、住宅の提供者と介護等サービスの供与者が契約上異なるため、非該当となる施設についても老人福祉法第29条第1項に規定する「有料老人ホーム」と同様な指導等が行えるよう、直ちに必要な措置を講じること。
- 法令に違反する事業者に対し、事業停止など、実効性のある措置を講じること。
罰則はあれど実効性のある措置はなし
このあと、2009年5月28日、厚生労働省は「未届の有料老人ホームの届出促進及び指導等の徹底について」を発出。再三、届出を促しても拒否する無届けホームには、罰則の適用も視野に入れて指導するよう促しています。無届けホームも必要に応じて立ち入り調査を行い、指導をすることとされた |
この通知の「未届施設の届出促進等に関するQ&A」においては、東京都の緊急提案の2にあるような、設置者が外部の事業者に委託してサービスを提供している場合や、入居契約とサービスの提供契約が別の事業者になっている場合も、有料老人ホームに該当するという見解が示されました。しかし、東京都が望んだ、違反事業者に対する事業停止など実効性のある措置は講じられませんでした。
届出を拒否するホームには「罰則の適用も視野に」とのことですが、老人福祉法で規定されている罰則は、30万円以下の罰金。30万円の罰金を払いたくないから届出をする、というホームが果たしてどれだけあるだろうか、と思います。
東京都が求めているように、実効性のある罰則があれば改善への圧力にはなると思います。しかし操業中のホームの事業が停止されたとき、実際に大きなダメージを受けるのは事業者より入居者です。また、30万円ではなくもっと多額の罰則金を科したとしても、ホームが破産してはやはり入居者が被害を受けることになります。入居施設に実効性のある改善指導を行う難しさはこの点にあります。
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