ショートステイの難しさ
ショートステイは、前のページに書いたとおり、短期間入所して介護を受けるサービスです。時間をかければ、利用者の状態像も把握できますし、利用者本人とも家族とも人間関係を作れます。しかしショートステイでは、リピーター以外は利用している短期間の間に手探りで、満足してもらえるサービスを提供しなくてはなりません。これがショートステイのおもしろさであり、また難しさでもあります。利用者がどこまで何ができるのか、事前に家族や在宅のケアマネジャーから情報を得ていたとしても、実態とは食い違っている場合も多々あります。このため、初回利用時に行う、利用者本人との面談によるアセスメント(課題分析)が非常に大切になります。
立位は安定しているか。どの程度歩行できるか。食事や排泄にはどの程度の介助が必要か。コミュニケーションは取れるか。家族や利用者本人と話しながら、一つ一つきちんと確認したいところ。しかし、毎日のように入退所があるショートステイでは、アセスメントにじっくり時間をかけられない場合も少なくありません。
また、ショートステイの利用者はふだん在宅で介護を受けており、介護手法の基本は在宅にあります。特別養護老人ホームなどへの本入所が、施設側の介護手法を基本に考えられるのに比べると、ショートステイでは基本が在宅であるため、介護を担う家族の要望を受け入れることが多くなります。
曰く、「家ではできるだけ歩かせているから、移動は手引き歩行でお願いします」「食事は一さじずつ口に入れれば全部食べられます」「オムツは使っていません。尿取りとトイレ誘導でお願いします」。
家族は、自宅での介護、あるいは状態像をイメージしていますから、たとえば狭い家の中では手引きや伝い歩きでの移動ができても、広い施設のフロア内で同じ方法での移動が可能かどうかには、なかなか思いが至りません。家では、付きっきりで介護して2時間かけて食べさせる食事を、ショートでも同じように提供するのは困難だということも、すぐには理解できないこともあります。頻尿で15分あるいは30分ごとに尿取りを持って駆けつけられるのは、マンツーマンで介護している家族だからこそ。しかし、家族にできるのにプロの介護職になぜできないの? という家族も決して珍しくはありません。
家族にしてみれば、ショートステイを利用して帰ってきたら、ADL(日常生活動作)のレベルが落ちていて、介護の手間が利用前より大きくなった、ということでは困ります。そうならないように、家と同じ介護をしてほしいと要望する家族もいると思います。その気持ちもとてもよくわかります。
ショートステイ側としては、初回アセスメントでどれだけ状態像をしっかり把握し、提供すべきケアを的確に判断できるかが大きなポイントになります。しかし、状態把握ができたからといって、提供可能かどうかボーダーラインのケアについて、「そこまでの介護はできません」ときっぱり断ればいいのか。これは、意見が分かれるところだと思います。
次ページに続きます。