どうして燃えつきてしまうのか?
前項で紹介したAさんは、「燃えつき症候群」になりやすいタイプが、燃えつきていく様子を特徴的に描いたものです。その特徴を挙げてみると……
- 仕事に理想を持ち、やりがいを感じている
- 誠意を持って仕事に取り組んでいる
- 周囲から頼られており、その信頼、期待に応えようという気持ちが強い
- 私生活を犠牲にしても、仕事に打ち込む
- 人の援助は上手だが、人から心配されたり、助けてもらったりするのが苦手
- 自分の仕事は自分にしかできない、人には任せられないと思っている
- 援助の対象者の問題を対象者自身に解決させるのではなく、自分の力で解決しようとする
- 問題解決のために、自分のシナリオどおりに対象者を動かそうとする
- 他者は自分を理解していないと思っている
- 自分が心身ともにどれだけ疲れているか自覚できていない
- 自分自身を大切にしていない
といったことが挙げられます。
いかがですか?
同僚や自分自身に当てはまると思うものはありませんか?
「燃えつき」とは、仕事に全力を傾け、まさに燃えつきるまでエネルギーを注ぎ込んでしまった状態です。どんな仕事をしていても、燃えつきに陥る危険はありますが、特に対人援助職に多いと言われています。それは、仕事上、扱っている対象が援助を必要としている「人間」だからです。職場や取引先との人間関係の問題は、どんな仕事にもつきもの。それがストレス源になることはよくあります。
しかし、対人援助職は職場などの人間関係に加え、援助の対象者との関係が仕事の中心です。問題を抱え、援助を必要としている人は、誰かに頼りたい、力を貸してほしいと思っています。つまり助けてくれる人に、無意識のうちにしがみつく危険を持っているのです。そこへ、何とか助けてあげなければという気持ちを「過剰に」持った援助職が接すれば、対象者と自分自身の境界線が曖昧になり、容易に対象者の問題に巻き込まれてしまいます。そして、燃えつきへの道をひた走ることになりかねません。
そもそも対人援助職には、生育歴の中で、何らかの喪失感、満たされない思いを感じている人が多いとも言われています。人のために何かをすることが習い性になっている。自分より他者のことを考える癖がついている。あるいは、人から「ありがとう」と言われたり、頼られたりしなくては自分の存在価値が感じられない。自分自身の尺度ではなく、他者からの評価が自分の価値を測る尺度になっている。そんな「共依存」的な傾向が強い人が多いのも、対人援助職の特徴です。こうした共依存的な傾向を自覚しないまま、対人援助の仕事を続けていくと、燃えつきに陥りやすくなります。
では、「燃えつき」に陥らないためにはどうすればいいかは、次のページで。