住宅購入の費用・税金/確定申告・住宅ローン減税

「金利上昇の今こそ完全固定ローン」の誤算

「ゼロ金利政策」解除が秒読みとなった日本経済。景気回復に伴い、金利の先高感が顕在化してきました。こうした金利上昇局面下で、住宅ローンはどう組むべきか?独自の理論を展開します。

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド


06年3月「量的緩和政策」が解除される
本年3月に大きなイベントが2つありました。1つが日銀による量的緩和政策の解除(3月9日)、そしてもう1つが23日に平成18年の公示地価が発表されたことです。2つの結果を受け、共通して言えることは、物価の方向感が安定基調を示し、今後、景況感が一段と盛り上がる可能性があること、また、地価の底入れ傾向が強まったことで「デフレ脱却」への動きがより鮮明になってきたことです。個人消費や企業の設備投資も旺盛なことから、日本の経済環境は内需主導による景気拡大路線にその軸足を移し始めましたが、他方で、マイホームを取り巻く環境は手放しで喜べない新たな局面を迎えつつあり、今後の経済政策から目が離せません。

特に「金利」には注意が必要で、5年にもおよぶ“超”低金利に慣れきってしまった中での金利先高感の台頭には早めの準備が欠かせなくなっています。そこで、金利が上昇トレンドを描きはじめた今こそ、「住宅ローン戦略」の基礎に立ち返りましょう。

「過払いリスク」と「返済不安リスク」を回避せよ


「賢いマンション暮らし」をしている読者の方は、「失敗しないように住宅ローンを組もう」と苦労されたと思います。また、これからマンションを購入しようという方は「上手な資金計画」を模索していることでしょう。とても感心させられますが、ここでいう「失敗しない」あるいは「上手な」とは一体どういう状態なのか、皆さんは正確に理解しているでしょうか?金利の「高い」「低い」にばかり傾倒してしまい、肝心な本質を見失ってはいないでしょうか?(おせっかいながら)今一度、住宅ローン成功法の基礎理論をここで再確認しておきましょう。住宅ローンにおける“上手”な資金計画(失敗しないローンの組み方)とは


  • いかに余分な利息を払わないようにするか?(利息の過払いリスク)

  • 長期にわたる支払いの中で、返済が滞らないようにするにはどうすればいいか?(金利変動による返済不安リスク)


    の2点です。少しでも金利が低い時に借り入れることが有利とされるのは、「過払いリスク」を低減させる効果を求めてです。また、ひと昔前まで住宅金融公庫が住宅ローンの代表格であったのも、成長経済の中、「金利は上昇し続ける」とのコンセンサスが背景にあったからです。「金利上昇リスク」が確実性を帯びている状況下では、返済負担が市場金利に影響されない(=返済額が不変)完全固定金利が有効に作用するのは説明するまでもありません。毎月の返済額が変わらないことが完済時まで約束されていることは、何にも増して安心感につながるからです。

    このように、誰もが「上手な資金計画」のためのノウハウを漠然とは理解し、実際、行動にも移しているのですが、理屈(基礎理論)を踏まえた上での資金計画ではないことが多いと思います。知らないうちに“感覚”で行動しているのです。そこで、「失敗しない住宅ローンの組み方」とはどういうものなのか、ここではその「定義」を再確認(復習)し、意識付けておきましょう。

    金利トレンドが上昇局面では「固定タイプ中心」 下降局面では「変動タイプ中心」


    次に、金利の先高感が強まっている昨今、フラット35に代表されるような完全長期固定の金利タイプが再び注目を集めていますが、ここでも基本原則を思い出し、メディア情報に流されないことが必要です。「住宅ローン戦国時代」がエスカレートする中で、商品が多様化し、金利タイプも細分化されたことで、多くの方が

     「少しでも低金利の恩恵を受けるべく、短期固定特約を選ぶか?」

         または

     「利上げ観測が本格化してきたので、返済額が変わらない
    完全固定金利がいいのか?」


    悩んでいることでしょう。お気持ちはよく分かります。そこで、困った時は原点に戻り、住宅ローンの選択基準を思い出してください。金利タイプ決定の基本原則は


    ・金利の上昇局面では「固定金利」中心

    ・金利の下降局面では「変動金利」中心


    です。フラット35の利用者がここ最近、急に増えたのは、金利の先高感が顕在化したことによる結果です。まさに、上記基本原則にのっとった選択行動なのです。ということは逆に、「失われた10年」と言われた金利が下がり続けていた時代には、当該原則からすると、長期固定金利は「タブー」だったことも分かります。下がり続ける金利を目先に、自身のローンでは金利を“固定”してしまった功罪が、「過払いリスク」となって表面化したからです。


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