□■それぞれの立場からの報告■□
●厚生労働省→→通知発令までの経緯のみ
医政局医事課の課長補佐が、通知発令までの経緯を報告。
しかし、医事課に異動してから日が浅く、引き継ぎを受けていろいろ調べてきたが、発令までの経緯については、当時在籍していなかったので十分な話ができないかもしれない、という前置きから始まりました。この方に責任はないかと思いますが、難しい問題を抱えた部署ほど人事異動が多いと言われる行政のやり口ではないかとふと思ってしまいました。
発言の内容としては、今回、医師、看護師をのぞく家族以外のものに対して痰の吸引を認めたのは、やむを得ない当面の措置で、訪問看護などが潤沢に提供されれば、家族以外のものの痰吸引は不要と考える、という見解でした。
2003年6月に、看護師等によるALS患者の在宅療養支援に関する分科会がまとめた報告書を読めばわかる程度の内容だったと思います。行政は、こうした場では決して踏み込んだ発言はしないし、こちらの手元にある以上の情報は提供してくれないものだと改めて感じました。そういう立場だから仕方ないと言えばそうなのですが。
●患者家族→→助かっている、という明るい報告
・9年前から、自分(長女)が在宅でALSの母親を24時間介護。
・3年前から人工呼吸器を装着している。多いときは1時間に3~4回、痰の吸引を行う。
・医師に、吸引は家族がやるように言われていたが、家族以外にも認められるようになってからは、ホームヘルパーに頼めるようになり、こうして外出できるようになった。
●在宅医→→在宅医の関心の低さを残念に思う、と報告
10年以上、かかりつけ医として在宅療養を支援してきた医師ならではの、具体的な現状の問題点がいくつか提起されました。
・通知では、気管カニューレ内部までの吸引を限度としているが、実際に吸引が必要なのはカニューレ先端の気管内。現状では不十分。
・地域医師会や他の在宅医と、この問題について意見交換しようとしたが、通知が発令されていたことすら知らない医師が多かった。関心が低く残念に思う。
・痰吸引を引き受けてくれる介護事業者が少なく、見つけるのにケアマネジャーが苦労している。これは、万一の事故の場合、刑事、行政処分は免れるものの、民事訴訟を起こされる可能性があるにもかかわらず、ホームヘルパーが業務として担うことはできないため、損害保険の適用外になっていることも大きな要因だと思う。
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