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リーマンショックが住宅不況を加速させる?(3ページ目)

日本で上場不動産会社の破綻が相次いだかと思うと、今度は海の向こう米国では、大手証券会社が経営難に陥る事態が続きました。米国発の金融不安が日本の住宅市場にどのような影響を与えるか、予想してみました。

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド

日本は「バブル崩壊」を経験したことのある貴重な国


日本は「バブル崩壊」を経験したことのある貴重な国だ。
次に、2番目の影響として不動産融資がさらなる規制強化の方向へ進むことが考えられます。理由は簡単、日本は「バブル崩壊」を経験したことのある貴重な国だからです。ご存じのように、すでに金融機関による不動産向け融資は厳しくなっていますが、リーマンショックによって“さらに”各行は融資姿勢を硬化させることになると考えます。

思い出してください。日本経済はバブルの後始末に13年もの歳月を費やしました。500兆円とも言われた不良債権を処理するのに累計で46兆円もの公的資金(=税金)を投入したのでした。小泉政権下、当時、経済財政・金融担当大臣だった竹中平蔵氏が「金融再生プログラム」を策定し、金融と産業を一体的に再生させようと尽力しました。大手銀行を対象に、資産査定の厳格化・自己資本の充実・企業統治の強化という3原則を掲げ、金融行政の強化に努めました。

また、不振企業の債権を主に非主力銀行から買い取り、主力銀行と協力して対象企業の再建を進める「産業再生機構」が誕生したのも、この時期でした。同機構の第一号案件が、マンション分譲も手がける「ダイア建設」(2003年8月決定)だったことは、ご記憶の方も多いことでしょう。その他、ライオンズマンションの「大京」や注文住宅大手の「ミサワホーム」も同機構からの支援を受けています。それだけ、バブルの後遺症は根深いものがあったわけです。

前置きが長くなりましたが、同じ二の舞を踏まないために、日本の金融当局がさらなる不動産融資の規制強化に動くのは自然なことです。リーマンショックによって、現在、全世界的に金融不安が蔓延しています。外資系金融機関が融資を厳格化するのは当然として、国内の金融機関も“守り”に入ることは必至でしょう。「アーバン」「ゼファー」……貸し渋りによって、すでに上場不動産業者までもが破綻に追い込まれています。それだけに、「ドミノ倒し」が繰り返されないよう、締め付け(=融資規制)の方向へ動くのは間違いありません。

成長シナリオが描けない中、金利は低位で推移する


そして最後、3番目は住宅ローン金利の引き下げ圧力が強まる、との観測です。日本経済は、今、「物価の上振れリスク」と「景気の下振れリスク」のジレンマに立たされています。食料品や光熱費などは負担増を強いられる半面、所得は上がらず、景気回復を実感できないでいます。加えて、与野党の“ねじれ”は解消されそうもなく、政局は空転しています。かつてのような成長シナリオを描けないのが、現在の日本経済です。

こうした中、リーマンショックが追い討ちをかける形で、金融市場を中心に先行きを曇らせました。幸い、米政府主導による迅速な対応(施策)により、足元、世界同時株安の再発は避けられそうな地合です。しかし、完全に不安が払しょくされたわけではありません。米国政府が金融機関の不良資産を買い取ろうとすれば、多額の公的資金注入は避けられないでしょう。財政悪化の呼び水となり、ドル安(円高)につながる心配があります。外需中心で成長してきた日本にとって、円高は喜ばしくありません。経済成長を腰折れさせかねない懸念材料となります。

教科書的に、景気低迷期には金融政策を「緩和」させるのが基本です。そのため、日本は政策金利を上げにくく、また、成長期待が高まらないと長期金利も上昇しません。つまり、市場金利は低位安定を継続することとなるのです。となれば、住宅ローン金利も同様、先高感は後退します。住宅ローン金利の引き下げ圧力につながると考えるのは、そのためです。


悪い予想は当たらないことを期待しつつ、事態の流れをもうしばらく眺めることとしましょう。

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