長期優良住宅/長く暮らせる家

シリーズ200年住宅(2) 家歴書って、何?

「家歴書」という言葉を聞いたことのある人は多いと思います。しかし、その内容を十分に理解している人は少ない印象です。マンションの資産価値にも影響しますので、本コラムで勉強しておきましょう。

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド


近頃、よく耳にする「家歴書」って一体、何なの?
いいものをつくってきちんと手入れし、長く大切に使うというのがストック重視型の社会――前回の第一回目で、超長期にわたって循環利用できる質の高い住宅のことを「200年住宅」と定義し、その普及のためには社会全体がストック重視型へと移行することが必要なことを説明しました。

「きちんと手入れして大切に使う」――言うのは簡単ですが、実は、生まれも育ちも異なる人々が1つ同じ屋根の下で共同生活するマンションでは、必ずしも簡単にいかない難点があります。専有部分は毎日、清掃を怠らない人でも、いざ共用部分の維持管理となると、途端に他人事になってしまう……これでは、マンションの資産価値にも悪影響しかねないでしょう。

そこで、登場するのが家歴書です。200年住宅ビジョンの中にも「家歴書の整備」が謳われています。この家歴書とは一体、何なのでしょうか? そして、家歴書を整備することでマンション生活にどのようなプラス効果があるのでしょうか? シリーズ200年住宅の第二段、今回は家歴書についてご説明したいと思います。

適切に維持管理していくための情報共有ツールが「家歴書」


まずは、用語解説から始めましょう。家歴書とは「住宅履歴書」とも呼ばれ、住宅の修繕履歴あるいは定期点検の結果などを記録した履歴簿のことをいいます。マンションが「循環利用」=「世代を超えて住み継がれる」ためには、居住者(その時の工事担当役員)が住み替わるたびに過去の修繕情報が消えてしまっては困ります。どこの業者に工事を頼み、修繕費用はいくらかかったか?……こうしたデータは修繕計画の立案および工事の実行には欠かせない有益な情報となります。こうした情報が偏在あるいは消滅してしまうと、維持保全に関する計画に基づいた点検や補修に支障を来たすこととなるのです。

そこで、各マンションの努力義務ではなく政策的なシステムとして、国を挙げて家歴書の作成・保存を後押ししていこうというのが200年住宅ビジョンの主旨です。住宅履歴情報の整備のために国費として4億円が計上。また、法制化に向けて「長期優良住宅の普及の促進に関する法律案」が今年2月に閣議決定されています。国会審議を経て、近いうちに施行されることでしょう(08年9月29日現在)。

このように、マンションを適切に維持管理していくための情報共有ツールが家歴書です。記録として残し、管理組合員の誰もがいつでも履歴情報を共有できるようにすることで、計画的な維持管理を可能とします。マンション単体ごとの規定ではなく、制度としての枠組みを構築することで、将来世代に承継できる良質な住宅ストック社会を形成していこうというわけです。

現在、ITを活用した情報収集管理ツールの開発も進んでいます。本コラムでは、すでに中古住宅にお住まいの方に向けて説明していますが、法律では新築住宅に対する建設あるいは販売業者へも努力義務を課す方向です。家歴書により住宅履歴を“見える化”することで、もっと住生活の向上に役立てようという考えです。


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