野村編集長の新刊「働く女性の24時間―女と仕事のステキな関係 日経ビジネス人文庫―日経WOMANリアル白書」 |
泉:今の自分に上手にブレーキをかけ、そこそこの満足をよしとしている今の女性たちは、これでいいと思っているのでしょうか。
野村編集長:将来に対しては、多くの人が不安を抱えています。その理由のひとつは、職場にロールモデルとなる女性の先輩がいないから。いろいろな先輩がいれば、この時期はAさんみたいに働こう、その後はBさんみたいに、とイメージできるのでしょうが、今はそういった状態にないのが現実です。
泉:私も働く女性の話を聞いていてそう思います。選択肢が多いから迷うし、悩むのでしょうね。そんな女性たちを見て、野村編集長はどうお感じになりますか?
野村編集長:長く働くなかでは「そこそこ」で満足する時期があってもいいと思いますが、若いうちからそれでいいのかなと思うところはあります。若いうちからブレーキをかけて年収300万円でOKと考えていても、この先それをずっとキープしていけるかどうかはわからないわけですから、ブレーキをはずして頑張ってみる時期も必要なのではないでしょうか。
泉:私も同感です。人生の中には、頑張りたいと思ってもそれが許されない時期もあるんですよね。だからこそ、頑張れる時にはチャレンジしてみてほしい。
野村編集長:そこそこの満足から脱出するきっかけは、発想の転換だと思います。例えば、どこかにおもしろい仕事があるかもしれないと考えるのではなく、目の前の仕事を一生懸命やってみてはどうでしょうか。コピー取りでも資料作りでも、取り組み方を変えることで仕事を面白くすることもできるはずです。
泉:今の環境の中でやれることをやる、ということですね。
野村編集長:どんな仕事でも、それを自分の専門にすることはできると思います。今の仕事は、会社全体の中で、または部署の中でどういうポジションにあって、何を期待されているかを考える癖をつけるといいですよ。そして、自分が一つ上のポジションだったら、自分が社長だったらどう判断するだろうか、と考えてみる。出世を目指すということではなく、こう考えることで仕事が面白くなってきますから。
泉:では最後に、これからの人生をハッピーに過ごすにはどうしたらいいか、メッセージをいただけますか?
野村編集長:ハッピーの素は人それぞれ違うものです。だから、まずは、自分にとっては何がハッピーなのかを知ることから始めるといいと思います。そして、「こうせねばならない。こうあらねばならない」という枠をはずしてみる。「この仕事じゃなきゃ自分のキャリアは活かせない」と考えるのではなく、目の前に来た仕事をチャンスと思ってやってみるのです。そうやって自分なりにやっていくうちにキャリアになっていくと思います。
今は変化の激しい時代です。そして、女性の人生は不確定要素が大きい。だから、柔軟であることが大切です。予定が変わってもいいじゃないですか。変化を楽しみましょう。
泉:今日はありがとうございました。
「常に、あり得る選択肢を複数想定し、どの道を進んだとしてもハッピーと思える力だけはつけておこうと思ってきた」と話す野村編集長。どっちに行っても違う面白さがあると思う気持ちのゆとりと柔軟性が、納得の人生を歩む秘訣だと感じたインタビューでした。