排他的経済水域(EEZ)とは何か?

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排他的経済水域とは?


以前に記事で触れた「大陸棚」とならんで重要な国際海洋法の知識が「排他的経済水域(Exclusive Economic Zone: EEZ)」です。排他的経済水域とはいったいどんなものなのか、国際法で何が認められているのか等、わかりやすく一問一答形式で解説します。

排他的経済水域とは?簡単に言うと?

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排他的経済水域においては、沿岸国は「経済的主権」に限定した権利を持つことができる。主権すべてが及ぶ領海・領空とは区別される


「排他的経済水域」とは、海を持つ沿岸国が、天然資源など「経済的」なことに対して「主権的行為」をとれる、つまり自国の支配下に置くことができる海域のことです。海中の水産資源や海底の天然資源は、排他的経済水域を持つ沿岸国のものであり、他国が勝手に取ることはできません。こうした権利が「経済的主権」の一例です。

また、沿岸国は人工島などの施設を作ることができ(ただし、これらは領土にはなりません)、海流や風を利用した発電などを行うこともできます。そして、それらについて国内法で定めを設けることができます。排他的経済水域は、国連海洋法条約(第57条)によって、沿岸から最大200カイリ(1カイリ=およそ1.8km)まで設定することが認められています。半径200カイリの円には、九州・四国・本州の半分を収めることができます。

排他的経済水域が設けられた背景・歴史

第2次世界大戦まで、国際政治というのはもっぱら欧米諸国の政治のことでした。したがって、北海やバルト海、地中海といった比較的小さな海洋における国家の境界=領海の境界には関心があっても、それ以外の海域利用や法制度について関心はあまり高まりませんでした。

しかし第2次大戦後、ラテンアメリカやアフリカなど、太平洋・大西洋・インド洋という大きな海を沿岸に持つ途上国は、この海域の資源利用を主張するようになり、なかには沿岸から200カイリまでを領海と主張する国々が現れました(この主張はラテンアメリカ、中でもチリが1947年にいち早く主張し、1952年にチリ・エクアドル・ペルーという太平洋の沿岸国が200カイリ領海を主張する「サンチャゴ宣言」を採択しました)

そこで先進国と途上国の話し合いのため「国連海洋法会議(国連海洋法条約発効はこの会議の成果です)」が設立され、この問題など、条約としては未確定だった海域利用の国際法ルール作りはじまりました。この会議は長きに渡りましたが、なんとか決着しました。ここで先進国と途上国が妥協したのは「あくまで『経済的権利に限定した権利』のある大きな水域を沿岸国に認める」というものでした。

先進国は、長年の会議中、著しく発展した海洋技術によって、自国から離れた沿岸海底の資源もある程度利用できることがわかったことで、「主権的権利を主張する海域を全否定することは得策ではない」と考えるようになりました。また、漁業先進国は、水域設定によって途上国沖合いの良漁場の管理義務を沿岸国に負わせることも必要だと考えるようになっていました。

こうして、排他的経済水域の規定を設けた国連海洋法条約が1982年に採択され、1994年に発効し、現在に至っているのです。

排他的経済水域と「領海」「公海」との違い

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排他的経済水域は戦後になって生まれた概念であり、公海・領海以外の「第3の水域」である


領海とは、領土と同様、「主権のすべてが及ぶ水域」であり、国連海洋法条約の規定によって最大12カイリまで設定することができるものです(第3条)。一方、公海とは「どこの国のものでもない海域」のことで、何世紀にもにわたって国際慣習法で「公海自由の原則」、つまり自由に航行・漁業などを行っていいというルールのもとにありました。

もっとも、公海について、現在では国連海洋法条約によってその原則が明文化されています(第87条)。公海に主権を主張できないことも明文化されました(第89条)。しかし、公海だから誰が何をやってもいいというものではなく、公海の平和的利用(第88条)、奴隷運送の禁止(第99条)、海賊行為の抑止(第100条)などが定められています。

さて、排他的経済水域は「領海」と「公海」のどちらにあたるのでしょうか。「経済的主権」が及ぶのであれば領海的水域と考えられますが、その他については公海に準じているともいえます。ゆえに、議論は分かれるところです。今のところ、一般的には「公海ではない(スイ・ゲネリス)区域」と考えられています。しかし領海とも異なるわけですから、どちらでもない「第3の水域」と考えるのが自然とされています。

隣国との距離が400カイリないの排他的経済水域は?

当然、両国とも排他的経済水域を200カイリ設定できません。国連海洋法条約では、第74条で「衡平の原則」に基づく解決を規定しています。具体的に述べているわけではありませんが、国際司法の判例によると、これは必ずしも中間線であるわけではありません。一般的に、海底が盛り上がったバンク(堆)は良漁場であったりしますし、また海底に油田・ガス田があることもよくあります。これらを無視して中間ラインをもって境界とすると、不公平が生じる場合が考えられます。

そうした場合は、まずお互いの国がよく話し合って納得の行く協議をし、うまく行かない場合は国際司法に決定してもらうことになります(両国同意の上で)。ですから「ここまでが中間線だからうちの排他的経済水域だ」という一方的な主張は必ずしも「衡平の原則」にかなっているとはいえません。

排他的経済水域は条約で自動的に決まるの?

国連海洋法条約による排他的経済水域は、あくまで「200カイリまで設定できる」という規定なので、何の障害がなくても設定しなければその国の排他的経済水域とはなりません。これは領海についても同じです。設定とは、国内法で12カイリまでが領海であると規定することです。逆にいうと、12カイリ未満の領海・200カイリ未満の排他的経済水域を設定することも可能です。

たとえば日本の領海法では、宗谷海峡・津軽海峡・対馬海峡・大隅海峡においては例外的に3カイリ領海と設定しています(附則2項)。日本の非核三原則と、米ロの核兵器搭載戦艦・潜水艦通行を両立させるためといわれています(政府の公式見解は「国際海峡としての利便性確保」)。

さて、日本は排他的経済水域では「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」によって200カイリが排他的経済水域であることを規定しています(第1条)。そして、日本海や東シナ海など、隣国と400カイリ以上離れていない海域においては、中間線にすると定めています。ただし、無条件に中間線としているわけではなく、「我が国と外国との間で合意した中間線に代わる線があるときは、その線」を採用するとしています(第1条2項)。

日本周辺で排他的経済水域を設定していない海域はある?

特に例外なく「排他的経済水域及び大陸棚に関する法律」により設定されています(第1条2項)。基本的に200カイリまでを水域に設定していますが、日韓・日中間など200カイリとれない部分は中間線としています。ただし、他国との協議で決定すればその通りではないとしています。

竹島問題のため、双方の排他的経済水域の主張が一部食い違う韓国との一部水域では、暫定的に韓国と協定を結んで「暫定水域」を設けています。ここでは日韓双方の漁船が漁業を営むことができますが、漁獲量などに対する違反を取り締まれるのはその船が籍を置く国だけ、ということになっています。このような水域は中国との間にも設定されています。

相手の排他的経済水域に立ち入ったら捕まる?

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たとえ領海内であっても、無害な船舶の航行の自由は尊重しなければならない


立ち入っただけで捕まえられることはありません。それだけで捕まえることは国際法違反です。領空の自由は厳しく制限されています。たとえ100%空が自国の飛行機などで埋まっていても、飛行機事故は地上の人々の生命・財産を大きく脅かす恐れがあります。よって他国の飛行機などが自由に領空に入ることはできません。

しかし、船舶の場合は違います。他国の船舶がたとえ領海の中であっても、沖合いを平穏に通るだけで沿岸国がとがめ立てする理由はありません。海上警察の指示に従ってくれなかったり、勝手に漁業を営んだりすれば別ですが、通航することだけをもって害もないのに捕まえる(だ捕)することは合理的とはいえません。

そこで、国連海洋法条約では領海内での外国船のこのような無害で平穏な航行を認めています。これを「無害通航権」といいます(第17条)。排他的経済水域は沿岸国の「経済的主権」しか及ばないので、領海よりもさらに広い自由、つまり公海に準じた船舶航行の自由、上空飛行の自由が全世界の国に与えられています(第58条)。

ただ、沿岸国の「経済的主権」は及びますので、外国船が排他的経済水域のなかで漁業を営んだり、資源の探査活動、海洋の科学的調査などについては沿岸国の許可が必要な場合があります。つまり、これらのことについては沿岸国の国内法を守らなければならない、ということです。いずれにせよ平穏に航行している船舶が排他的経済水域に侵入しただけで、だ捕されるようなことはあり得ませんし、あれば国際法的に大きな問題となります。

排他的経済水域で科学調査をすることは違法ですか?

国際海洋法条約では、平和的な海の科学調査・研究の促進がうたわれています(第242条)。海洋調査の実施については、排他的経済水域を管轄する沿岸国の同意が必要ですが、それが科学的なものである場合、沿岸国は原則同意を与えなければなりません(第247条)。国連海洋法条約では、このような調査は拒否できるとしています(第247条5項)。

  • 資源探査、開発に直接影響する場合
  • 大陸棚の掘削、爆発物の使用、有害物質の排出をともなう場合
  • 人工島などの施設を建設するための調査である場合
  • 計画の性質や目的が不透明な場合

また、同意された調査の結果は、迅速に国際的利用ができるようにしなくてはなりません(第249条)。ちなみにアメリカは排他的経済水域の科学的調査についての管轄権を主張していません。どうぞご自由に、ということです。しかし、アメリカが他国の排他的経済水域で科学的調査を行う場合は同意を得ています。

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