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自民党名物「派閥」の基礎知識(2ページ目)

9月になれば本格化する構造改革と、それによっておこる首相・官僚・政治家たちの三つどもえのバトル。・・・とその前に、バトルで重要な役割を果たすであろう「派閥」について、もう一度おさらいしておきましょう。

執筆者:辻 雅之

橋本派

正式な名称は「平成研究会(平成研)」ですが、自民党内の他派閥ではもとの「経世会」の名前でよばれることが多いようです。

もともと田中角栄率いる田中派が源流。1985年に竹下登が派閥を奪取する目的でいまの派閥を結成、最大派閥となります。以後、竹下・橋本・小渕首相を送りだし、名実ともに自民党を「支配」してきました。

この派閥の特徴はなんといっても「選挙がうまい」。今年の総裁選でそれにもかげりがみえるかと思われましたが、7月の参議院選挙では一挙に10人もの新人候補者を当選させ、そのパワーを見せつけました。

しかし今、橋本派といえば「抵抗勢力」。自民党の利権構造の中心であり、これを壊そうとする小泉首相に抵抗する・・・というイメージが定着しつつあります。

なにも橋本派だけが抵抗勢力ではない(だったら構造改革は簡単にできる)のですが、たしかに利権構造の中心にいることは間違いないでしょう。

特に「特定郵便局」は田中角栄以来、橋本派をささえる強力な支持団体として強い結びつきをもっているといいます。現に、今年5月の「全国特定郵便局長会」総会には野中広務元幹事長が出席。「全特(全国特定郵便局長会の略)、かくも健在なり」と演説し、その結びつきを確認しています。

この構造と選挙のうまさがむすびついて、大きな勢力を維持してきた橋本派。しかし小渕・橋本につづくニューリーダーが見当たらないのが唯一にして大きな難点となっています。

「総裁候補のいない派閥は衰える」は自民党の常識。小泉首相の高支持率がつづくなか、ポスト小泉を狙うことのできるニューリーダーの出現が、派閥の維持には欠かせないといえます。



森派

正式な名称は「清和政策研究会」で、「清和会」とよばれることが多いでしょう。田中角栄のライバル、福田赳夫の派閥として生まれ、第2派閥として現在までいたっています。

福田の後継者だった安倍晋太郎が急死したのがひびき、その後はなかなか首相をだすことができず、内部争いや分裂が続きました。しかし四代目のリーダー森喜郎は一貫して小渕政権を支え、その後おもいがけず首相となることに。

森退陣後も、森派会長だった小泉純一郎が首相に就任。小泉首相自体は派閥を離脱しましたが、政権中枢を塩川財務相、福田官房長官など森派の政治家でかためるなどしていて、やはり森派との結びつきは強いようです。

森派は全体的に右寄り、タカ派的性格が強い派閥といえます。これは森前首相の「神の国」発言や、小泉首相の靖国参拝などに現われています。

また、福田赳夫がそうであったせいで「小さな政府」、つまり政府が国債を大量発行してまでたくさんお金を使って事業を行うことに批判的な考え方をもつ人が多いのも特徴といえます。

ただ、このような思想的な特徴はあくまで「どちらかというと」。自民党の派閥は今はどれも似たり寄ったりで、森派の中にも利権構造につかっている人、小泉首相の「抵抗勢力」になるような人たちはいるわけです。そう考えると結束はあまり強くないわけで、これが森派の弱点といえるでしょう。

今後は結束して小泉首相をささえることができるか、それともいざとなったら分裂してしまうのか、今後に注目です。
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