■さて、牛海綿状脳症(BSE)問題ですが…■

BSE問題で牛肉の売上が落ち込んでいます。BSEの原因となる異常プリオンに汚染された牛肉が出回っているかもしれないという不安から消費者が買い控えているからです。

とはいっても、ほとんどの牛肉は問題ないはずなのですが、万が一汚染されていたら困るということで買い控えているのです。つまり、情報が不完全であるので、不安だから牛肉はやめておこうという行動に出ているのです。もし、情報が完全で、それが汚染されていない牛肉だとわかれば、皆が安心して買うはずです。ここでも、キーワードは「情報」です。ここで、ノーベル経済学賞とつながってきます。

情報の不完全を解消するために、政府は検査を行うことにしました。きちんと検査を行なってBSEではないと証明し、消費者に安心して牛肉を食べてもらおうということです。
この政策自体は的を得たものです。

しかし、実際に簡易検査を行ってみると陽性反応が出てきて混乱してしまいました。当初、坂口厚生労働大臣は「簡易検査の結果も即時に公表する」としていましたが、自民党議員の圧力で、簡易検査の公表はしないということになるようです。簡易検査で陽性と公表されると風評被害が出るからだそうです。

自民党議員は畜産業界のためを思って、簡易検査の公表に反対したようですが、次のような疑問が生じます。まずは、消費者あっての畜産業ではないのかという点。つまり、重視されるのは消費者であるということです。

もう一つは、風評被害とは、情報は不完全であるからこそうわさで起こるのです。風評被害を避けるために情報を隠せば、消費者はさらに不安になり、うわさで行動し、風評被害が拡大する恐れもあります。今回、農水大臣が安全宣言を出すといった矢先に陽性反応で牛肉の出荷停止騒ぎが起きました。検査の不手際も多いようです。このような状態で、簡易検査の結果を公表せずに、もう安全だといわれても不信感を増幅させるだけです。昨日、畜産関係団体の安全をPRする広告がありましたが、時期尚早な安全宣言とも受け取れる広告は不信感を増すだけではないでしょうか。

「情報の経済学」の基本に忠実な政策は、まず、情報を公開し、どのような検査体制、流通体制になったから安全が確保できるのかを消費者に説明することです。失われた信頼を取り戻すには地道な情報提供と丁寧な説明が何よりも必要だと思います。


今回は、ノーベル経済学賞の功績は、BSE問題への対応にも応用できるというお話でした。


★ キーワード★

情報の非対称性
片方は情報があるが、もう一方は情報がないこと。

レモンの原理
2001年ノーベル経済学賞を受賞したジョージ・アケロフが提唱した理論。消費者が品質に関する情報を持っていないと、悪質なものばかりが流通し、良質なものは流通しなくなるという理論。

逆選択
情報が不完全であることが原因で、良質な物が競争に勝って生き残るの通常とは逆に、悪質なものしか市場に流通しなくなること。


関連サイト
牛海綿状脳症(BSE)の基礎知識 (All about Japan「家事の知恵」)
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