満足できる仕事がしたい
▲「誰もやるべきと言ったわけじゃありませんが、投資家のために必要だと思って変えました」 |
車田さんが最初に公務員を志したのは中学2年生のとき。学校の進路指導がきっかけだった。
「人生を振り返ったとき、満足できる仕事がしたい。公(おおやけ)の利益になる仕事をしたい」
それから中央官庁を目指し、エリート官僚の登竜門、東京大学法学部に進学。いつしか通産省(現経済産業省)を目指すようになった。「通産省は許認可が少ない官庁です。だからこそ権限ではなく、自分の知恵と実力で勝負できる」と考えたという。
その後同省に入省し、2度にわたり商品取引業界を担当。そこで業界の整備と改革に奔走した。実は株式取引よりも先に商品取引のオンライン取引手数料が自由化されているが、これも車田さんの尽力があってのことだという。
「誰もやるべきと言ったわけじゃありませんが、投資家のために必要だと思って変えました」
業界全体に自由化への理解を促すため、車田さんは自ら業界の各企業を訪問した。「企業の人が官庁を訪ねることはあっても、その逆は滅多にない」そうだが、円滑な制度改革のために入念なソフトランディングを目指した。
その結果、日本の商品取引はかつて一枚(商品取引の単位)5000円以上していたものが、今では500円以下にもなっている。車田さんの努力は大いに報われたといえるだろう。
手数料以外にも、株式取引に比べ不利だった売買益に関する税制や、取引所へのザラバ取引の導入など、グローバル化に対応した施策を次々と実現させた。