▲本社風景「空きのペットボトルをパーテーションとして使っている」 |
もちろんこの手法は、キャリアデザインにも応用できる。職種、役職、スキル、年収、上司、同僚、部下といったキーワードを設定し、それぞれに理想的なイメージをコラージュ。それを20年後、10年後、5年後という具合に作成し、その実現の道すじを考えるだけでも、将来のキャリア設計だといえる。
以前このコーナーで紹介したGMOインターネット熊谷正寿社長が、常に持ち歩くシステム手帳に、「広々とした社長室で執務する姿」「できるエグゼクティブが、部下にテキパキ指示する姿」などを貼り付け、自分のキャリア理想像を思い描いていたのを思い出す。
弁当箱から建物まで
この手法を使い、兼元さんは多くの製品をデザインする。手掛けたデザインは、ロゴマーク、化粧品のパッケージ、照明灯、バイクなど多種多彩。印象に残っているのは、有料道路の施設と弁当箱だという。施設は、職員が事務所から地下を通って料金所に向う際、必ず池の前を通るようにして心理的効果を狙った。弁当箱はフタに保温材を内蔵し、外であたたかい弁当を楽しめるようにした。
兼元さんが「何でもやれたので面白かった」と語っているように、これだけデザイナーとして腕を振るう場があれば、デザイナー冥利に尽きるとしか言いようがない。ところが兼元さんは、3年目の92年、なぜか「建設塗料会社」に転職する。