キャリアプラン/キャリアプラン事例

i-cf社長、佐藤氏の意外な素顔

今回の「知識人」は、アイ・シー・エフCEO・佐藤克氏。03年に副社長として入社し、CEO就任後は約4億円の赤字から大幅黒字化を達成。現在はさらなる事業拡大を展開中という佐藤氏を訪ねた。

執筆者:角田 正隆


今回の「知識人」は、株式会社アイ・シー・エフ(i-cf. Inc.)CEO佐藤克氏。2003年に副社長として入社し、CEO就任後は約4億円の赤字状態から大幅黒字化を達成。現在は多数のグループ企業を抱え、さらなる事業拡大を展開中というパワーの持ち主だ。そんな推進力の源と素顔に迫るべく、「金曜、20時」直前、「金曜、18時」に佐藤氏を訪ねた。「よろしくお願いします!」と会議室に響きわたる元気な声で迎えてくれた佐藤氏。だが、席に座ると突然、笑みを浮かべながらも首をかしげて…。

自分を見つめなおした"引きこもり期間"

ic-f.Inc. 佐藤克氏Photo
佐藤克(さとう かつみ)  株式会社アイ・シー・エフ代表取締役CEO。1975年、秋田県生まれ。日本大学在学中に株式会社エンパワーメントを設立、企業コンサルティング、事業再生など多数の事業・会社運営を手がけた。計8社の取締役、経営塾「20代、30代社長の会」代表幹事を経て、2003年、他職を退任して株式会社アイ・シー・エフ代表取締役に就任
佐藤CEO(以下、敬称略):うーん、まいったなぁ……。ガイド:? どうしました?佐藤:このタイトルですよ。僕、「優雅」でも「知識人」でもないんで、申し訳ないですね(笑)。"金曜、20時"は当てはまりますけどね、でもこれは誰でもそうか(笑)。ガイド:あまり外には出られないんですか? とてもお顔が広いと伺ってますけれども……。佐藤:ええ、最近はやっと、出られるようになってきましたけどね。実はここ2年くらい、"引きこもり"だったんで(笑)。ガイド:佐藤さんが"引きこもり"、ですか(笑)? また、どうして? 佐藤:ある時期までは、毎日人に会っていたんですよ。もともと「人に会うのが趣味」ってくらい、人と出会うことは好きだったんで。都内の温泉に、20代・30代の社長が集まってやる勉強会(「20代、30代社長の会」)も、中心になって運営していましたし。その中のコアなメンバー、特に仲のいい連中とは、しょっちゅう会ってましたけど。昼じゃなくって、夜に(笑)。でも、その会が100人規模まで大きくなったころ、ふと見回したら「あれ? 俺がいちばん儲かってないじゃん」って気づいて(笑)。まわりも「克っちゃんも、なんとか儲けさせてあげないとね……」なんて言い出すもんだから「お前ら、見てろよ!」なんて言い返したり(笑)。でも、そこで真剣に思ったんですよ。あまりにも商売ベタな自分に気づいて「まずは、自分の実力をつけてからだろ?」って自問自答して。それが3年前くらいで、そこから、自分の実力をつけるための"修行期間"に入ったんです。それが"引きこもり"。ちょうどアイ・シー・エフ入社のころですね。「克、最近つきあい悪いよなー」なんて言われながらも、会社のことに集中して、真剣に取り組んでましたね。

ic-f、大幅黒字転換への激動の1年間

ic-f.Inc. 佐藤克氏
「たとえば『日本一の企業に』とかはどうでもいい。『とにかく、自分の腕を磨かないと』という思いでいっぱいでしたね」と振り返る。そのまっすぐな信念が結実して、いまのアイ・シー・エフがある
ガイド:それでも、最近は外に出られるようになったということは、少し余裕が出てきた、実力が実感できるようになった、ということですか?佐藤:そうですね、まだ余裕はありませんが、人に会うことも修行に取り入れられる段階まではたどりつけたかなぁ、と。"会社の業績イコール自分の実力"とは思ってないですけど、とりあえず、「克っちゃん、儲かってないよね…」と言われる域からは抜け出せたので(笑)。そもそも、アイ・シー・エフには、コンサルティング契約の副社長という肩書きで関わり、上場赤字会社の再建を担うため、まず、自身の会社を共同経営者に譲り、そして子会社をすべて売却。財政を立て直しました。CEO就任時は、社員数7人の状態から、再スタートしたんです。社長就任の時点(2003年10月)で「翌年4月の単月黒字化」のプランは頭の中にはあり、それに向けて子会社の売却をすると同時にM&Aも進めて、予定通り2004年4月には黒字転換できまして。……自分で言うのも何ですけど、振り返ると、入社後の1年間って、メチャメチャめまぐるしかったですね(笑)。ガイド:それだけ短期間に結果を出せたからこそ、めまぐるしい1年間になったんでしょうね。そして現在では、グループ企業は好調に伸び続け、日本国内にとどまらない事業拡大など、めざましい勢いを保ち続けている。これだけの展開をなしとげる佐藤さんの経営理念・信念はなんですか?佐藤:そうですね、求めたい結果があれば、そこに到達するための正しい方法があるはずなんです。それを考えて、実行する。ほかに方法はないと思います。社訓にもしているんですが、僕の座右の銘は「正しく思い、正しく考え、正しく行動する。さすれば正しい結果が出る」。正しい結果が出ないなら、考え方か行動が間違っている。失敗したなら、間違っていたところを正しく考えてやり直せば、必ずたどりつけるはずなんです。ガイド:ふつうなら、一度失敗しかけたことからは撤退してしまいがちですが、そこで「失敗してもやり直す」といえる精神力・バイタリティがすごいですね。佐藤:どっちかというと、「知識人」じゃなくて「肉体派」ですからね、僕は(笑)。自分でも、帰り道でふと思ったりするんですよ。「6、7年前は、会社から銭湯行って会社戻って、仕事をして寝袋で寝る生活してたんだよな」なんて。体力的にも精神的にも、よくここまでやってこれたな、というか。実を言えば、アイ・シー・エフでも、針の穴を通すような綱渡りの時期が3度はありました。危機を感じたら、誰かに相談したくなりますけど、人にも相談できないような、本当の危機もあって。そうなると、最後は自分との戦いですよね。それを切り抜けて、結果を出せたのは、やっぱり人との出会いで吸収させてもらったこと、それから本で学んだこと、この2つが生きているな、と痛感しますね。佐藤氏の信念を支えた座右の書は、次ページに
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