◆建物を壊さないで配管を取り替えられる!
さて、今度は配管の施工方法の側面から、給水・給湯管をみていきます。
(a)先分岐配管方式
屋内の各水栓近くでメイン管から分岐する工法で、これまで(1)や(3)の配管には、一般にこの工法が用いられてきました。(2)の樹脂管でも、硬質塩化ビニール管などは、この先分岐配管方式によって施工されます。配管を交換するときは、壁や床などを壊し、古い管を取り出し、新しい管と交換します。家の配管をすべて交換するためには、当然のことですが、管が通っているところが工事範囲となりますから、工事期間も費用も相当なものになります。
(b)サヤ管ヘッダー工法
屋内に設けられたヘッダー部より分岐する、比較的新しい工法で、保護管となるサヤ管の内部に本来の給水・給湯管となる樹脂管(架橋ポリエチレン管など)を通す方法です。管は途中に継ぎ目がないので、水漏れの危険性が少なく、壁や天井などを壊さずに配管を交換できます。
ブルーのサヤ管が給水用で、ピンクのさや管が給湯用。 樹脂管は水道水に含まれる塩素によっても影響を受けにくく、サビや腐蝕の心配がない。 写真の樹脂管は架橋ポリエチレン管。 樹脂管の耐久性は30年以上、さや管の耐久性は約60年と言われている。 (写真/旭化成 へーベルハウス) |
◆1日で家中の配管の交換ができる!
では、管の交換はどうやって行うのでしょう?
この作業は、天井裏などにある各樹脂の給水(または給湯管)管のヘッダー部分と、各水栓金具の部分の両端に分かれて2人で行うようにします。
まず、水道メーターの元栓を閉めます。そして、古い樹脂の給水(または給湯管)管の両端を切断し、ヘッダー部と給水(または給湯管)管の間にあるアダプターごと捨てます。古い樹脂の給水(または給湯管)管の端に強靱なロープを結び付け、ロープを結んだのとは反対のほうから古い樹脂管を引き抜き、ロープをサヤ管の中に通していきます。古い樹脂管を完全に引き抜いたら、ロープの端に新しい樹脂管を結び付け、サヤ管の中に押し込んでいきます。樹脂管をサヤ管の中に通し終えたら、新しい樹脂管の端に新しいアダプターを取り付け、ヘッダーに接続。元栓を開け、念のため、水漏れがないか確認したら、作業終了です。一般の一戸建てなら、一日の工事で、一軒の家のすべての給水・給湯管の交換を終わらせることができます。
そのほかにも、サヤ管ヘッダー工法は、従来、用いられてきた先分岐工法と比較すると、何箇所かで同時使用しても流量の変動が少ない、施工時間が短い、などのメリットがあります。
◆給水・給湯管は、高耐久で交換しやすいのが理想的
給水・給湯管についていろいろ見てきましたが、耐久性のある素材のものを交換しやすい方法で施工するというのが理想的だということがわかっていただけたでしょうか。あなたが現在家を建てたり、分譲住宅を検討しているのなら、配管の仕様についても調べてみるのをオススメします。
マンションなどの集合住宅では、かなり以前からサヤ管ヘッダー工法が採用されてきました。しかし、一戸建てを施工する際にこの方法を一戸建てに取り入れている住宅メーカーは、まだわずかです。
その理由は、以前は、水道管からきた水を一旦受水槽で受けて屋内の配管を通る仕組みでないと、樹脂管を使うことができなかったからです。平成10年に規制緩和により、一戸建てやアパートのように受水槽を通らず、水道管と屋内配管が直結して給水する場合でも、樹脂管が使用できるようになりました。よって、今後、サヤ管ヘッダー工法を取り入れて施工された住宅が増えていく可能性はあります。
最近の建物は、寿命が長くなり、40年、50年と長く暮らせる耐久性を備えたものが増えてきました。けれども、安心して、長く快適に暮らしていくためには、建物が丈夫なことだけでなく、配管などの設備面の寿命も考慮しなければならないポイントでしょう。配管を、ある意味、消耗パーツと考え、定期的に安価で簡単に交換できるようにしておくのも、長く暮らせる家の知恵かもしれません。