遮音性を高めるにはまず窓から
後から窓を交換するのは費用も工期もかかり、大変なこと。できれば新築時にある程度の性能を確保しておきましょう |
近ごろは、気密・断熱性の高い窓や玄関ドアを使い、窓に複層ガラスを採用した住宅も一般的になってきました。開口部は外と接する部分であり、冒頭で触れた「空気音」は開口部のような空気の通り道から出入りするため、防音・遮音の弱点となります。また、家が完成してから性能の高いものに交換するのは難しいので、できるだけ新築時に一定以上の性能を備えた製品を選びたい部分です。
窓の遮音性を高めるには、複層ガラスの窓にするだけでなく、防音合わせガラスを使ったり、厚さの異なる2枚のガラスを組み合わせる複層ガラス用サッシにしたり、2枚のガラスの空気層を大きめにとった(通常6mmの空気層を12mmにするなど)サッシにするなど、ガラスとサッシの両方に気を配ることが必要になります。最近ではリフォームで設置できる内窓も発売されていますが、内窓を設置することによって、開閉が二度になることを考えれば、新築当初から少なくとも複層ガラスを選んでおきたいところです。
遮音で意外な落とし穴になるのが、エアコンの穴です。室内のエアコンと室外機をつないでいるホースが壁を通るための穴です。ホースと壁の穴の間のすき間が、専用の粘土などでしっかりと塞がれていれば問題ありませんが、不十分だと、そこから音が侵入することがあります。また、換気口や換気装置が音の侵入経路になることもあります。ただ、換気口や換気装置は塞いでしまうわけにはいかないので、消音機を取付けることで対策します。消音機はサイレンサーとも呼ばれていて、市販されていたり専門業者が個別に製作するものなどがあります。また消音機は、風量の少ない換気装置には使用できますが、キッチンの換気扇など風量の多いものには使用できないことが多いようです。
遮音だけでなく吸音もとり入れる
さらに静かな暮らしを営める家を目指すなら、遮音だけではなく、吸音を考えてみましょう。例えば、室内の内装材に吸音性の高いものを採用するのもひとつの方法です。音は、表面が平坦で固いものにあたるとよく反射します。逆に、細かな凹凸が多く柔らかな素材では、反射する率が低くなります。この性質をいかして、内装に凹凸の多い天井材や柔らかな壁材を使用すれば、ある程度の音は吸収されるでしょう。防音をうたった内装材も数多く販売されていますので、設計担当者と相談しながら、必要に応じて選ぶのがよいと思います。
床をカーペットにすることも効果が期待できます。表面が平滑で固いフローリングの床の場合、音が大きくなるだけでなく、2階の場合は床から階下へ伝わる「個体音」が気になります。防音性能の高いフローリングもありますが、カーペットにしたり、フローリングの上にカーペットや大きめのラグを敷くことでさらに防音効果が高くなります。この場合、毛足の短い固いカーペットより、毛の長いタイプの方が効果的なのは言うまでもありません。
また、窓のカーテンにもひと工夫しましょう。ブラインドやロールスクリーンより、ドレープをたっぷりとったカーテンを使用すると効果的です。もともとカーテンには、外からの音を和らげ室内の音を外に漏れにくくしたり、音そのものをソフトにする効果があります。たくさんのヒダが吸音性を高め、生地の厚みが優れた遮音性を生み出すドレープカーテンは、更なる効果が期待できるというわけです。
このように静かな暮らしを営める家にするには、窓、ドアなどの開口部、内装材や設備の性能に頼るだけでなく、プランニングの段階から防音・遮音性を考えることが必要なのだということがおわかりいただけたと思います。その上で、カーペットやカーテンなどを上手にとり入れ、居心地のよい住まいをつくりあげていくことが、住まいへの愛着を深めることにつながるのではないでしょうか。