住宅税制と本当の家の価値
日本では築年数を経た住宅の評価がなぜ低いのか。それは税制と関係があると考えられます。日本の税制では、新築時を100としてだんだんと減価償却するとし、築25年もすると、建物に対する評価は限りなく0に近いものとなっていきます。
質のよい家を建て、適切な手入れをしていけば、長く暮らせる家がもっと増えることでしょう |
しかも、新築時からきちんとメンテナンスをしてきた家も、建築後何も手入れをしなかった家も同じように判断されます。本来なら、1軒ずつ住宅を診断して、価値を判断しなければならないところを、築年数というひとつの基準だけで決めてしまうのは安易すぎるのではないでしょうか?
アメリカのホームインスペクション(住宅診断)のような、不動産を売買するときに導入されている住宅に対する客観的な評価基準が確立されていないことも、日本の中古住宅の低評価に拍車をかけています。
もともとこういった状況であった上に、前ページで触れたように、新築のほうが購入しやすい環境があったために、日本では中古住宅の市場が育たず、新築偏重の状態がずっと続いてきたわけです。
長く暮らせる家を増やそう
とはいえ、少しずつではありますが、中古住宅の人気は高まっています。実際に、中古マンションはここ数年、価格が上昇しています。その理由は中古物件数が多く、一戸建てに比べて立地条件や面積などを横並びで比較しやすいことや、リフォームで自分の好みが反映しやすいという側面もあるでしょう。そのほかにも、既存住宅の性能表示制度の創設や、前述した新耐震基準による特例の拡充など、質のよい中古住宅の流通をバックアップしていこうという動きが目立ってきています。さらに、これから建てる家についても、「超長期住宅先導的モデル事業」などの取り組みをはじめ、長く暮らせる品質のよい住宅を建て、それを維持していこうという流れが加速しています。
かなり遠大な話ではありますが、私たちが高品質の家を建て、手入れを怠らずに住宅の品質を維持しようとすることで、少しずつ日本の中古を含めた住宅の評価が変わっていくのだと思います。そうして、長く暮らせる家が増えていくのではないでしょうか。