日本の照明が明るいのは白色光が多いから?
同じ照度でも光源の光色(色温度)によって明るさ感は異なります。新品の蛍光ランプで白色光と電球色を見比べた場合、大半の人が白色光のほうが明るいと答えます。同じ明るさのものでも、人の目にはそのように見えるから不思議です。(写真1)
実際、電球色は暖かな光で家庭的な雰囲気が得られるので、私はお客さまにアドバイスする段階で電球色を薦めることがよくあります。しかし、人によっては電球色が暗くみえるのでイヤだ、と言うこともありました。
もともと、私たち日本人は暖かい電球色よりさわやかで活動的な白色の光色を好む傾向があります。これにはいろいろな理由が考えられますが、現に住宅の照明で白色光の比率が多いことは紛れも無い事実です。
図は照度と色温度の関係を示したものです。今から60年以上も前に作られたオランダのKruitofという人が研究した統計データです。日本でもいまだに照明設計の目安としてこのデータが活用されることがあります。
この表では,例えば電球や電球色(2700~3000K)の光源で100ルクスはとても快適で演色性(色の見え方を表す光源の性質)の良い光源であれば内装色なども自然な感じに見えますが、同じ100ルクスでも5000Kの昼白色の照明では陰鬱で色も不自然に見えてしまうことを説明しています。
このことから空間の明るさ感は照度だけで計るのではなく、光源の色温度も重要で、本来これを無視した照明は考えられにくいのですが、残念ながらそのような照明空間が日本の住宅に多いのです。
白色光で部屋を暗くすると陰気な感じになりやすいことは多くの人たちが感覚的にわかっているせいか、日本の住宅は明るい照度が自然と求められます。
図1.色温度と照度の効果(Kruitof,1941 佐藤1997より変革) |
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