土地活用のノウハウ/入居者ニーズとマーケティング

安定そして厳しい現実-賃貸住宅経営の展望(2ページ目)

新しい年を迎え、資産活用についての方針をお考えかと思います。どういう年になるのでしょうか。賃貸住宅を経営的観点から考えてみました。過去の推移、現在の特徴、これから必要なことを考えてみました。

谷崎 憲一

執筆者:谷崎 憲一

土地活用ガイド

引っ越しピークの時期でも人の移動がない

新居の整理は楽しいものです
さらに、最近は、人の移動が著しく鈍化していることを指摘しておかなければなりません。引越しをともなう「移動」です。昨年の賃貸住宅市場の繁忙期は、「1月後半から始まり、3月半ばには終わった」と言われています。ところが今年は、「2月中には終わってしまうのでは」と、ささやかれています。

大きな理由が、転居者の減少です。経済情勢の影響が大きいでしょう。引越しをして新たな住まいを探す人が減っているのです。数少ない「動く」人は、進学・転勤など、転居せざるをえない理由を持つ人たちに限られます。加えて、各法人は社員・従業員の転勤自体を減らしています。

また、更には「なんとなく環境を変えてみる」、「もうちょっと広くて綺麗な部屋へ」といったニーズも大きく減少しています。新築物件の有利を語った「新築プレミアム」という言葉も、今や成り立たなくなったのが現状です。

首都圏などでは、分譲マンションの契約率が上がり、中古マンションなどの契約件数も増加しています。賃貸からの乗り換えが増えているのでは、と観測されていることも、さらなる懸念材料でしょう。

「不労所得」から「サービス業の経営」へ

ご入居者へのサービスの視点
以上、「今後も安定が続く賃貸住宅経営」と、「今後も厳しくなる市況」、両方を語りましたが、ここで私がぜひ皆さんにお伝えしたいこと、それは、賃貸住宅経営における、「サービス業の視点への転換」の必要性です。

大家業イコール不労所得。それが通用する時代はもう終わったと考えるべきでしょう。少子化・人口の減少という基礎的環境の中、市況はさらに厳しくなっていくのです。これからは、「賃貸住宅経営というサービス業」を営む視点をもって努力しなければ、成功がおぼつかないばかりか、経営の存続も危うい時代がやってきます。最初にお話しした、「今後も安定が続く賃貸住宅経営」という展望は、この視点の転換ができた大家さんの未来にこそ、ひらけるものであることをしっかりと心に留めておいてください。

では、賃貸住宅経営におけるサービス業の視点、とは、具体的にどんなことを指して言うのでしょうか?どんな心構えが、空室を出さない賃貸住宅経営の実現につながるのでしょうか?こちらについては、来たる賃貸経営繁忙期の時期に合わせ、回をあらためてお話していく予定です。

なお、今年の賃貸住宅経営をめぐる問題として、気になる「更新料裁判」の行方があります。昨年、関西地区における複数の裁判で、更新契約締結の際の更新料の特約につき、「無効である」との判決が示され、いま、このことが多くの大家さんを心配させています。

次回は、この「更新料裁判について考える」をお届けします。


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