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和への回帰(上)~時代の必然性だった?(2ページ目)

「和」への回帰がトレンドになっています。しかし、和への回帰は突然出現したわけではなく、200年住宅やエコの流れと無関係ではありません。今回はそんな時代背景をみてみましょう。

河名 紀子

執筆者:河名 紀子

家づくりトレンド情報ガイド

30代・団塊ジュニアに圧倒的支持

和風ダイニング
和紙を使った照明はモダンなリビングダイニングに落ち着きを与える(積水ハウス「縁の家」)
和モダンのデザインについて簡単に説明しますと、「モダンデザインに和の要素や木の風合いを取り入れ、装飾性を極力排除したシンプルな和風デザイン」といったところでしょうか。たとえば軒の水平線と障子・格子・柱・梁などの垂直線を組み合わせ、シンプルでありながら安定感のあるイメージを与える和テイストのシルエットが特徴です。

和室の天井や大屋根、門構え、床の間など、伝統的な和を新しい解釈でリデザインし、現代の生活スタイルに馴染みのあるデザインにアレンジしており、最近、部屋の間仕切りなどに使われる格子スクリーンや平屋建て外観、あえてあらわしで見せる柱や梁なども、和へ回帰する表れの一部といっていいかもしれません。
おうちくらぶ調査
既婚女性450人に聞いたところ、和モダンを志向する割合は「全体<30代<団塊ジュニア」の順で強くなる(おうち*くらぶ調査より)

実際、和モダンスタイルは、年配者というよりも30代夫婦や団塊ジュニア世代に強く受け入れられているようです。住宅フランチャイズ「フィアスホーム」の情報サイト「おうち*くらぶ」アンケートによると、「木の家を建てるならどんなスタイルがいい?」という問いに「モダン和風」が44%を占め、「希望の和室スタイル」も「伝統的な純和室」と「モダンな和室」がほぼ拮抗。しかも30代や団塊ジュニアでみると、「モダン和室」への支持が圧倒的になります。

エコと実用と美を兼ね備えた「新しい和の形」

さて、和への回帰は最近のエコ・ロハス志向の流れと無関係ではありません。例えば、むき出しのガラス窓よりは障子や格子を使用することで、近隣からの視線をほどよく遮りながら、強い日照を適度に和らげ、紙を通した柔らかい光に変えてくれます。また、障子窓を開け放つとオープンな開放感の演出ができ、自然の風を室内に取り込むことにも一役買ってくれます。
ミサワホーム平屋
最近増えている平屋型商品も、日本伝統の和風住宅にルーツがある(写真は、今夏発売されたミサワホームのネット販売平屋住宅「SMART STYLE A ウェブダイレクトモデル)

西洋的な開閉式の扉でない、引き戸のドアや間仕切りは、開閉時のスペースが不要なため省スペースに役立ちますし、部屋と部屋の間仕切りとしても適度に仕切ってくれます。たとえばリビングダイニングの隣に和室があって、その仕切りが壁に囲まれたドアタイプだった場合、和室は単独の部屋としてしか使えませんが、仕切りが襖のようなスライディングタイプのものならば、開け放てば、リビングダイニングから和室につながる大空間が実現でき、閉じれば個室として……というようにフレキシブルに使えます。

このような間仕切りの使い方は、現代のマンションなどで多く見られる方法ですが、本来は日本の伝統家屋に当然のように採り入れられていたもの。続き和室を仕切り一つで家族の食事の空間にしたり、くつろぎの空間にしたり、寝室にしたり、はたまた冠婚葬祭の場にしたり……など、日本古来の知恵が凝縮されて今に受け継がれている大切な住文化の一つといえるでしょう。

和室
「1室は和室に」という声は相変わらず多い。押入れの収容量や使いやすさを再評価する動きも(三井ホーム「モア・ストーリー」)
西洋風の住宅のイメージが「壁に囲まれた個室化」という、メリハリをつけて仕切るイメージだとすると、和モダンの住宅は「ソフトに仕切る」イメージといえるかもしれません。仕切り方を変えることで時にはパブリック、時には個人のスペースと役割を臨機応変に変えられる、そんな実用と簡素美を兼ね備えたデザインだからこそ、戦後60年を経てもなお日本人のDNAに響いているのかもしれません。

次回は、各住宅企業からリリースされた「最新の和の形」を紹介します。お楽しみに!

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