鎌倉時代も夏に手を焼いていた?

縁の家
伝統の知恵を現代に再現した和風住宅が増えている(写真は積水ハウス「縁の家」)
徒然草の中で「夏をもって旨とすべし」と書いたのは、鎌倉時代に生きた吉田兼好。この言葉からも分かるように、日本の住宅は昔から夏の暑さを考慮して造られてきました。夏に帰省した田舎の家や古い歴史的建造物を訪れると、天井が高く障子や襖、格子などが効果的に使われ、真夏でもヒンヤリ涼しかったという経験があるのではないでしょうか。

このように日本の家は昔から風通しを良くする工夫が各所に盛り込まれていたのですが、現代の私たちがこうした「吉田兼好の家」を建てるのはかえって難しくなっているのが現実。限られた敷地や厳しい法規制のなかで古民家のように天井を高くとることは難しく、また障子戸の窓では防犯やプライバシーの点から現代のライフスタイルには合いません。

特に都市部の住宅では、隣に民家が迫るなかでのプライバシーの問題、道路の騒音や排気ガスなど、窓を開け放して風を通したいという気持ちがあっても、どうしても締め切った暮らしを余儀なくされてしまいます。

都市
アスファルトに覆われた都市のヒートアイランドは深刻さを増している
他方、都市の道路はアスファルトで覆われ、建物が密集し、ヒートアイランド現象が発生。夜間になっても昼間の熱がこもって温度が下がらず熱帯夜が続き、一晩中エアコンをつけっぱなし……と、これではますますエコと逆方向に進んでしまいます。ここで、なるべく自然エネルギーを利用した最近のエコ住宅の例を見ていきたいと思います。

計画的な植栽が風をつくり風を導く

砂漠化したような現代でも、かろうじて「風」や「緑」といった自然の力は残されています。樹木や建物の配置、季節や時間ごとの日照、風の向きを考慮して、住宅の設計段階から適度な日照と通風を得られるようなシステムも出来上がっています。ハウスメーカーの例でいうと、旭化成ホームズの「日照通風シミュレーション」住友林業の「涼温房」などに代表されるものです。

植栽イメージ
リビングなどの南開口部に植栽を植えると、風を導きやすくなる
また積水ハウスの「5本の樹」計画のように、住宅の回りに樹木を配置することで、緑を身近に感じる心理的効果や、風を室内に導きやすくなる効用があるといわれています。最近の住宅では、わずかなスペースであっても緑のある空間を設ける設計手法が一般的ですが、それはこのようなエコ配慮も背景にあるのです。

リビングなど大きな窓が設けられることの多い南の開口部近くに落葉樹を植えれば、夏にはその枝と葉が生い茂って直射日光をコントロールしてくれますし、葉が落ちる冬には暖かな光を取り込んでくれます。樹木は、隣家との間に発生する輻射熱を吸収してくれる効果もあり、葉の間を通り抜けた風が冷やされて居室に導かれると、涼しくなるという冷却効果もあります。

緑の簾
ツル性植物をカーテンのように配置すれば、目にも環境にもやさしい天然の簾に
最近は簾の効用も見直されていますが、例えばアサガオのようなツル性植物をスクリーンのように配置するだけでも簾のような効果があるとか。緑のブラインドでプライバシーも確保でき、一石二鳥ですね。

夏の強い直射日光が入りづらくするために、庇を長くとる住宅が増えているのも最近の傾向。夏の直射日光が室内に入ると体感温度が上がってしまうため、冷房の設定温度を24~25℃と低めにしてしまいがち。直射日光をコントロールするだけで、27℃くらいの設定温度でも不快感を感じず、エコにもつながるのです。

次ページでは日本特有の湿気対策と、住宅構造によるエコ対策について紹介します。