誰でも出入りでき、何度も侵入を可能にしたマンションの構造はどんなものだったのでしょうか【写真はイメージ】。 |
・検証1:アクセス方式
・検証2:エレベーターの停止階
・検証3:階段の出入口
・検証4:オートロックの重要性
・検証5:防犯カメラの意義
検証1:アクセス方式
マンションのアクセス形式を分類すると【図1】のようになります。【図1】マンションのアクセス方式。階段室型・片廊下型は低中層マンションに、中廊下型・コア型・ツインコリドール型・ボイド型は高層・超高層マンションに多くみられるアクセス方式です。 |
今回事件のあったマンションは、3階ごとにエレベーターが停止する仕様になっており、その停止階のみに共用廊下がある形式でした。すなわち3、6、9、12、15Fのエレベーターが停止する階は片廊下型、その他エレベーターが停止しない階の住戸はいわゆる階段室型といわれるアプローチ方法になります。新聞に掲載された間取り図やマンションの写真を元にアクセス方式の概念図を作成しました【図2】。
【図2】今回事件のあったマンションは図のような2つのアクセス方式の混合型だったと推測されます |
エレベーター停止階ではない住戸は、最寄のエレベーター停止階で下り、共用廊下と共用階段を使って自宅玄関へ向かいます。
ここで片廊下型、階段室型の防犯性の注意点を振り返ってみましょう。
・片廊下型【図3】
【図3】片廊下型模式図 a~dまでの全ての住戸がA,B階段と共用廊下を使用する。 |
この型は一般の低中層マンションで多くとられるアクセス方式です。住戸の北側に共用廊下を設け、同じフロアの住戸では行き来が可能です。このタイプのマンションの居住性は、共用廊下側の窓のプライバシーが守りづらい、閉鎖的であるなどの問題があります。防犯面では共用廊下は屋外で開放性が高く、その分不審者が侵入しやすいこと、階段は避難のためにたいてい2つ以上ついており、不審者の逃走経路が2ルート以上できてしまうことが挙げられ、比較的犯罪率が起こりやすい型と考えてよいでしょう。
・階段室型【図4】
【図4】階段室型模式図 A階段を使用するのはa,bのみ、B階段を使用するのはc、dのみ。階段の使用者が特定される。 |
階段室型マンションは居住性でいうと、北側のプライバシーが守られ、階段の利用者が限られることで一般に片廊下型より居住性が高い方式といえます。防犯性の面でも、階段室の利用者が限定されることから領域性が確保されます。領域性があると犯罪は起こりにくくなります。また逃走経路が1ルートしかないためこの点でも犯罪率は低いと考えられます。ただし、階段室の見通しが良いことが条件です。
この2つのアクセス方式がひとつのマンション内に混在しており、防犯上の注意事項も割り増ししたと考えてよいでしょう。一部階段室型でありながら、3階おきに開放廊下型だったため、犯人は開放廊下の問題点である「逃走経路が2ルート以上ある」ことを利用し、経路を毎回変えて逃走しています。逃げ道が何通りもあったことや、階段室が建物の内部に入り込んだ内階段方式で見通しが悪かったため、結果として逃走しやすい構造になってしまっていたと考えられます。