マンション物件選びのポイント/マンションの構造・耐震性

RC造や壁式構造…マンション構造の種類・違い・特徴

マンションの構造にはどんな形式が多いでしょうか。最も一般的な「鉄筋コンクリート(RC)造)」や「鉄骨造(S)造」「鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造」などもあります。これらの構造の仕組みや種類などをわかりやすくまとめました(改訂版:2018年10月 初出:2006年12月)

井上 恵子

執筆者:井上 恵子

住まいの性能・安全ガイド

マンションの構造の種類・違い・特徴

「マンションの構造」というと、とっつきにくい部分かもしれません。しかし2005年の構造計算書偽造問題や、阪神淡路大震災、東日本大震災など大きな地震を経験し、マンションの購入前に構造をチェックしてから購入する人が増えました。
 
どんな構造で建てられているか確認しよう

購入前に、どんな構造で建てられているか確認しよう


今回は、マンションの構造の基礎知識として、耳にする機会の多いRC造、S造、SRC造の違いや特徴、ラーメン構造、壁式構造という構造形式別の分類について解説いたします。
 

マンションを使用材料ごとに分類
RC造、S造、SRC造

マンションの構造を使用する材料別に分類すると、
・RC(鉄筋コンクリート)造
・S(鉄骨)造
・SRC(鉄骨鉄筋コンクリート)造
などに分類することができます。まずはそれぞれの構造の特徴を見ていきましょう。
 

RC構造の「RC」ってなに?

マンションで最も多い「RC造」。RC造とは鉄筋コンクリート構造のことで、英語のReinforced Concrete (補強されたコンクリート)の頭文字をとっています。
 
鉄筋の周りに型枠を配し、そこにコンクリートを流し込んで固める

鉄筋の周りに型枠を配し、そこにコンクリートを流し込んで固める


鉄筋コンクリート構造は、鉄の棒(鉄筋)を組んだ型枠にコンクリートを流し込んで固めたもので、鉄筋の短所をコンクリートが、コンクリートの短所を鉄筋がというように、お互いに短所をカバーしあう組み合わせとなっています。型枠にコンクリートを流し込んで造るため、建物の形を比較的自由にできるのもRC造の特徴のひとつです。
 

鉄筋コンクリート構造の原理

鉄の棒である鉄筋は「熱に弱く錆びる」「引っ張り力には強いが圧縮力には弱い」という特性があります。一方コンクリートはアルカリ性で耐火性があり、「圧縮力には強いけれど引っ張り力に弱い」という特徴があります。

鉄筋を覆うコンクリートが熱に弱い鉄筋を守り、酸化を防ぎます。また、建物にかかる圧縮力にはコンクリートで対抗し、引っ張り力に対しては鉄筋で補強し、コンクリートと鉄筋が一体となって造られることで、マンションに必要な強度を持つ優れた構造となっています。
 

S造ってどんな構造?その特徴は?

RC造に次いでマンションの構造で多くみられるものにS造があります。S造のSは英語のSteelの略で、鉄骨造のことです。

鉄骨造では柱や梁などに鉄骨を使用しています。鉄骨は切った断面の形がH型、□型、I型などをしており、それぞれH型鋼、角型鋼、I型鋼などと呼びます。
 
鉄骨の種類の例。図のようなH型鋼、角型鋼のほかI型鋼、L型鋼などがあります

鉄骨の種類の例。図のようなH型鋼、角型鋼のほかI型鋼、L型鋼などがあります


S造の特徴としては、RC造よりも大きな空間ができること、建物自体が軽くなること、工期が短くて済むことなどがあげられます。工場、オフィスビル、体育館などの大空間にも使用されます。

建物が軽いことで地盤への負担は少なくなりますが、風、地震、交通振動によって揺れやすい特徴を持っています。鉄骨造の住宅を建てる場合は振動を抑えるために制震装置をつけるなどの対策がとってあるかがポイントになるでしょう。
 

SRC構造の「SRC」ってなに?

SRC構造とは、「鉄骨鉄筋コンクリート」造のことでSteel Reinforced Concreteの頭文字を取っています。
 
SRC構造のイメージ図。RC造とS造の組み合わせで日本独自の構造。

SRC構造のイメージ図。RC造とS造の組み合わせで日本独自の構造。


鉄骨鉄筋コンクリート造は、鉄筋コンクリート造の芯の部分に鉄骨を入れたもので、「鉄筋コンクリート造」と「鉄骨コンクリート造」の長所をあわせた構造となります。7~8階建て以上の中高層マンションに見られる構造で、RC造よりも強く、柱も細くできます。建設にかかるコストはRC造、S造に比べ高めになります。

それでは次に構造材の組み立て方からみた分類方法で、ラーメン構造と壁式構造について見てまいりましょう。
 

ラーメン構造のしくみ

ラーメン構造のラーメンとはドイツ語で「額縁」「枠」という意味になります。柱と梁の接点がしっかり接合されており、耐力壁や筋交いを入れなくても耐震性を確保できる構造形式で、マンションに多く見られます。柱・梁のフレームで耐力を出すので、間に壁のない自由な空間を作ることができます。低層から超高層まで幅広く対応でき、鉄骨造や鉄筋コンクリート造で採用されます。
 
ラーメン構造と壁式構造の違い。ラーメン構造は柱、梁で構成する。壁式構造は壁で建物を支えていて、窓が小さくなる傾向がある(出典: 一般社団法人日本建築学会 )

ラーメン構造と壁式構造の違い。ラーメン構造は柱、梁で構成する。壁式構造は壁で建物を支えていて、窓が小さくなる傾向がある(出典: 一般社団法人日本建築学会

ラーメン構造のマンションの場合、間取りが比較的自由でリフォームにも有利です。最近のマンションではアウトフレーム工法で柱・梁が室内に出ない形式も増えましたが、室内に梁や柱のでっぱりが出てくる場合は事前に家具がうまく配置できるか検討したほうがよいでしょう。

【関連サイト】ラーメン構造(マンション用語集 ラーメン構造・壁式構造)
 

壁式構造のしくみ

壁式構造は比較的低層のマンションに多く見られます。基本的に5階建て以上では採用されません。ラーメン構造との大きな違いは、ラーメン構造が柱・梁の「線」でかかる力を受けるのに対し、壁という「面」で力を受けることです。

壁で力を受けるため、大きな開口部(窓)を設けることは難しく、開口部の大きさに制約が出たり、間取り変更リフォームで既存の壁を取り払うことができません。

大きなメリットは壁式構造では基本的に柱や梁はないため、室内はすっきりとした空間になり、家具の配置もしやすくなるでしょう。下図は同じ間取りで左がラーメン構造、右が壁式構造のものです。
 
ラーメン構造と壁式構造。同じ間取りでもラーメン構造(左)では室内に梁型や柱型が出る。壁式構造(右)は室内に柱・梁型は出ない。クリックで拡大。

ラーメン構造と壁式構造。同じ間取りでもラーメン構造(左)では室内に梁型や柱型が出る。壁式構造(右)は室内に柱・梁型は出ない。クリックで拡大。

 
壁式構造は、壁をがっしりと厚く頑丈につくるため、地震に強い構造です。阪神淡路大震災ののちの調査で、古くても被害があった壁式マンションはほとんどなかったことがわかっています。

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