マンション物件選びのポイント/マンションの性能・耐久性

「二重床・二重天井」の構造がマンション選びにとって大切な理由

マンションの「二重床・二重天井」とは?この構造にはどんなメリット・デメリットがあるの?直床仕上げって?床下や天井裏は隠れて目に見えない部分だけれど、マンション選びの際にチェックしておきたい大切な性能であり、重要なポイントです。(改訂:2018年10月/初出:2007年9月)

井上 恵子

執筆者:井上 恵子

住まいの性能・安全ガイド

将来性を左右する二重床・二重天井とは

「二重床・二重天井」の構造がマンション選びにとって大切な理由

見えない床下、どうなっている?

少し前、マンション購入は戸建て住宅購入前のワンステップと考えられていた時代がありました。しかし今では品質や耐久性が向上し、マンションを終の棲家として購入する人も増えました。

長く住んでいれば、ライフスタイルや家族構成の変化が起こり、間取り変更リフォームの必要性も出てくるでしょう。そんなとき、「二重床・二重天井」仕様であることが生きてきます。今回は「二重床・二重天井」の構造や、そのメリットについて詳しく解説してまいります。
 

二重天井という構造のしくみ

まず「二重天井」とはのようなしくみになっているか見てみましょう。
【図1】二重天井概念図。天井内には小梁やダクト、配管などが隠されている。

【図1】二重天井概念図。天井内には小梁やダクト、配管などが隠されている。

 
【図1】は天井付近を縦方向に切った断面図で、二重天井の仕組みを説明した図です。天井スラブ(A)の下に空間(B)を取り、その下に天井仕上材(C)があります。「天井スラブ(A)+空間(B)+天井仕上材(C)」という形の二重構造になっているので「二重天井」といいます。これに対して天井スラブに直接ビニールクロスなどを貼って仕上げをしたものを「直(じか)天井」といいます。

二重天井の天井スラブと天井仕上材の間にある空間(B)には照明器具の配線や、台所、洗面、トイレ、浴室などについている換気扇のダクト(風導管)が通っています。
 

二重床という構造のしくみ

次に「二重床」のしくみを見てみましょう。
 
【図2】二重床の概念図。マンション仕様では防振ゴムのついた支持ボルトで床の下地を支える方法が一般的。

【図2】二重床の概念図。マンション仕様では防振ゴムのついた支持ボルトで床の下地を支える方法が一般的。


【図2】は床付近を縦方向に切った断面図で、二重床の仕組みを説明した図です。床スラブ(A)の上に専用の支持ボルト(B)を立て、その上に合板などの床下地材をのせて床仕上げ(C)を行う方法です。床スラブと床仕上げ(フローリングなど)の間に空間(D)があります。この空間には給水管、排水管、ガス管、電気配線などを通します。これに対して床スラブの上に直接フローリングなどの床仕上げがしてあるものを「直(じか)床」と言います。

二重床・二重天井とも、スラブとは別に下地と仕上材が必要なので、直床仕上げや直天井に比べ、その分手間や費用がかかる仕上げ方法となっています。
 

直天井(じかてんじょう)の場合

【図3】は天井スラブに直接仕上げ材を貼って仕上げる「直天井」の仕組みを説明した図です。小梁やダクト用の下がり天井などを隠さず直接天井面に現れるため、天井面がデコボコしています。
直天井概念図。天井の小梁やダクトの下がり天井などがあり、天井がでこぼこしている。電気配線が天井スラブに打ち込まれる

【図3】直天井概念図。天井の小梁やダクトの下がり天井などがあり、天井がでこぼこしている。電気配線が天井スラブに打ち込まれる

直天井仕上げの場合、照明器具の配線などは天井のコンクリートスラブに打ち込まれることになります。この方法だと、「照明器具の位置をずらしたい」「照明器具を増やしたい」という希望が出ても、変更が難しくなります。

さらに、コンクリートスラブの欠損も気になるところです。設備配管を打込むとその分コンクリートの厚さが薄くなり、子どもが椅子から飛び降りるときなどに起きる「ドシーン」という重衝撃音が、より響く可能性があります。

【関連記事】マンションの遮音・防音の基礎知識:床
 

直床(じかゆか)仕上げとは

床のコンクリートスラブに直接床仕上げ材を貼る「直床」と呼ばれる方法は、その名の通り床下に空間がなく、床スラブの上に直接フローリングなどを張って仕上げています。

給排水、ガス、電気配線などのスペースがないため、必要なところだけ床の仕上げを上げたり、その部分のみ床スラブを下げたりして対応します。そのため住戸内に床段差が生じることもあり、また配管スペースが限定されます(【図4】参照)。
 
【図4】水周りだけコンクリートスラブを下げ、かつ床仕上げを上げて床下に配管空間を確保する方法。大きな間取り変更に対応しにくい。

【図4】水周りだけコンクリートスラブを下げ、かつ床仕上げを上げて床下に配管空間を確保する方法。大きな間取り変更に対応しにくい。

 

直床のマンションで気をつけたいこと

マンションによっては、水回りなど必要な部分のみの床スラブを下げて対応し、見た目は床に段差がない仕上げにする方法を採用しているものもあります。見た目の段差がないため日々の暮らしの中では不便に感じることはないでしょうが、いざキッチンや浴室などの位置を変えようとしたときに制約が出る恐れがあります。
 

二重天井のメリット
部屋がすっきりし遮音性にも考慮

二重天井のメリットとして、天井裏の空間にダクトなどの配管類が隠れる、または一部を残してある程度隠れるため、天井の出っ張り引っ込みが少なくなり、天井が「すっきり」することが挙げられます。
 
天井にでこぼこがない方がすっきりし、間取り変更リフォームもしやすい

天井にでこぼこがない方がすっきりし、間取り変更リフォームもしやすい

二重天井にすることによって遮音性が向上するとは一概には言い切れませんが、少なくとも天井スラブの欠損はないので、それによって遮音性が損なわれる恐れがないという点ではより安心と言えるでしょう。
 

二重床のメリット
設備配管類のメンテナンスや交換が容易に

二重床のメリットとして設備配管類のメンテナンスのしやすさがあります。床の要所要所に点検口や掃除口を設けることで、設備配管類の日頃のお手入れや交換が容易になります。一般的に二重床仕様のマンションの住戸の床には段差がなく、バリアフリー仕様になっています。
 

二重床・二重天井は将来のリフォームに対応しやすい

二重床、二重天井になっているマンションは、天井裏や床下の空間で設備配管を動かせるので、将来の間取り変更に柔軟に対応できます。

私が以前インタビューしたあるご夫婦は、思い出深い子育て期を過ごしたマンションをリフォームし、定年退職後もそこに住もうと考えていました。ところが業者に来てもらって見てもらうと、そのマンションは間取り変更ができない仕様のマンションだということがわかり、泣く泣く売却を決意したそうです。

このような事例からも、二重床・二重天井になっている利点は「今すぐ」感じられることではないかもしれません。しかし将来、長くずっと住みたいと思った時に、それが叶うために必要なことなのです。
 

「階高」と「二重床・二重天井」をあわせてチェック!

二重床・二重天井になっていれば設備配管類のメンテナンスがしやすく、将来の間取り変更にも対応し、コンクリート欠損の心配もありません。冒頭でも触れましたが、二重天井・二重床にするためには手間もコストも工期もかかります。見た目ではわからない、このような箇所にも気を配って造られているかどうかもマンション選びのひとつの指標にしてはいかがでしょうか。

また、住み心地の良さという点では「天井高さ」も影響してきます。二重天井・二重床で、なおかつ天井高さがあるマンションがお勧めです。その3点が満たされているかどうかはマンションの「階高」をチェックです。「階高」についてはこちらの記事で詳しく解説しています。

ぜひ「階高」と「二重床・二重天井」をあわせてチェックするようにしてくださいね。

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