分譲マンションでできるリフォーム・できないリフォーム
家族構成や生活スタイルに変化があった時、または経年劣化によって内装材や設備配管などの交換期が来た時、リフォームを検討する方もいらっしゃるでしょう。ところが分譲マンションでは「できないリフォーム」が意外と多くあるのをご存じですか。今回はニーズが高いと思われる分譲マンションのリフォーム事例を10例ご紹介し、それぞれのできる? できない? を確認していきたいと思います。
これからご紹介する事例すべてに当てはまることですが、マンションは簡単なリフォームでも管理組合に申し出が必要だったり、使える材料に規制があるなど、マンションごとの規約がある場合があります。必ず事前に確認するようにしてください。
<目次>
- マンションリフォーム関連法規
- 事例1 壁紙を張り替えたい
- 事例2 床をフローリング仕上げにしたい
- 事例3 大きく間取り変更をしたい
- 事例4 バルコニーをサンルームにしたい
- 事例5 窓(サッシ)を交換したい
- 事例6 玄関ドアの色を変えたい
- 事例7 コンクリートの壁に穴をあけて隣とつなげたい
- 事例8 排水管を交換したい
- 事例9 1階の専用庭を駐車場にしたい
- 事例10 ルーフバルコニーを庭にしたい
- 騒音に気を付けて、ご近所への挨拶も忘れずに
まずはマンションリフォーム関連法規を確認
マンションリフォームに関する法規には以下のものがあります。・建物の区分所有等に関する法律
・マンションの管理の適正化の推進に関する法律
・マンション管理適正化指針
・マンションの建替え円滑化などに関する法律
・管理規約
この他にも建築基準法、消防法などを守らなければなりません。マンションの管理は「区分所有法」に基づいて行われます。基本的な重要事項はここで決められていますが、個々のマンションの事情により細かく具体的に定めたものが「管理規約」となります。実際にマンションリフォームを行う時は、個々のマンションの「管理規約」を参考に、専門家などと相談の上で行うようにしてください。
事例1.分譲マンションの壁紙を張り替えたい
こちらは基本的に「○」。区分所有法では分譲マンションの天井、壁、床など躯体部分を除く室内の仕上部分は「専有部分」となり、区分所有者の判断でリフォームすることができます。
但し、マンションなどの大規模建築物は内装制限(※)がかかっていることが多く、その場合は室内の仕上げに燃えにくい材料を選ばなければなりません。建材の種類を変える時は特に注意が必要です。
(※)内装制限…火災が発生した時に燃え広がったり有毒ガスが発生することを抑えるために設けられた内装材の制限
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事例2.分譲マンションで床をフローリング仕上げにしたい
答えは基本的に「○」。こちらも事例1と同様に「室内の仕上げ部分」に当たり「専有部分」に該当するため変更は可能です。
但し、騒音の問題もあり、フローリングの遮音等級を規約で決めているマンションもありますので、必ず管理組合に事前確認をしてください。フローリングはカーペット、畳よりも音が響きやすくなるので変更には十分な検討が必要です。
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事例3.分譲マンションで間取り大きく変更をしたい
結婚、出産、子どもの成長・独立と、ライフステージごとに「必要な間取り」は変わるもの。分譲マンションなら「思い切って間取りを変えたい!」という希望は叶えられるのでしょうか?答えは基本的に「○」。構造躯体ではない間仕切壁は「専有部分」に当たるため、位置の変更は可能です。
但し台所、浴室、洗面所などの水回りの位置を変えたい場合、マンションではメインの給排水管を共用で使用しており、その位置を変えることはできません。従って、住戸内の水まわりの位置を大きく変える場合は十分な検討を要します。また、騒音の観点からも上下・左右に接する住戸との間取りの兼ね合いの検討も必要です。例えば、隣戸の寝室の横に自宅の水まわりを持ってくると、音の問題が発生するかもしれません。どこまで変更可能かは専門家とよく相談してください。
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マンションは、コンクリートでできている住戸間の壁は壊すことはできませんが、住戸内の間仕切壁は、取ってしまうことが可能です。最近はスケルトンリフォームで思い切った間取り変更を行う方もたくさんいらっしゃいます。構造体がしっかりしており高耐久のマンションを購入すれば、間取り変更リフォームで長く理想の家に暮らすことができますね。
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事例4.分譲マンションでバルコニーをサンルームにしたい
答えは「×」。バルコニーはマンションの共用部分にあたり、居住者は「専用使用権」を持っていますが、管理は管理組合で行うことになっています。そのように少し複雑な形態のため「好きなようにリフォームして良い」と誤解しやすい場所であり、トラブルになりやすい部分と言えます。例えばバルコニーをサンルームに変更してしまうとマンションの景観が変わり、所有者全員に損害を与えてしまう恐れがあります。
同様にバルコニー部分には火災時の避難のための避難ハッチや、破壊して隣に逃げられる隔壁などがついています。避難ハッチの上にタイルを敷いたり、隔壁の前に物置を置くようなリフォームはしてはいけません。
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事例5.分譲マンションで窓(サッシ)を交換したい
答えは基本的に「×」。窓枠及び窓ガラスは専有部分に含まれず、専用使用権のある共用部分になります。
しかし、多くのマンションが管理規約を作るとき元にしている国土交通省の「マンション標準管理規約」によると、2004年の改正で「窓ガラスの防犯性、防音性、または断熱など住宅の性能向上を目的とするものに関して、管理組合が計画的な修繕を速やかに実施できない場合は区分所有者の責任と負担で実施できる」という細則ができました。詳しくは管理組合に問い合わせてください。
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事例6.分譲マンションで玄関ドアの色を変えたい
答えは「△」。まず玄関ドアの外廊下側の扉の色は、個人の判断で変えることはできません。こちらもマンション全体の景観に影響を与えてしまうからです。しかし、玄関ドアの内側は専有部分になるので色を変えることは可能です。また、カギも専有部分ですので、より防犯性の高いディンプルキーに変えたいという希望は分譲マンションでは可能となります。
事例7.分譲マンションでコンクリートの壁に穴をあけて隣とつなげたい
マンションの隣同士の住戸を購入し、堺の壁を壊してつなげることは可能でしょうか?または上下階の住戸を購入し、床に穴をあけて階段でつなげてメゾネットにしたい!というリフォームは可能でしょうか?ここまで読まれた方は薄々お分かりかと思いますが、答えは「×」。マンションのコンクリートの壁や床はマンションを支える大事な構造部分です。壊すことはできません。例えばクーラーを新設するため、コンクリートの壁に配管を通す穴をあけることも禁じられています。
事例8.分譲マンションで排水管を交換したい
答えは「△」。排水管の「部分」によります。マンションの排水管は住戸内にあるPS(パイプスペース)の中を最上階から最下階まで貫いており、そこに各住戸の排水が流れます。このように共用して使用している排水管は共用部分になるため、居住者の意図だけで交換することはできません。
ただしその排水管から枝分かれし、居住者が専用で使っている「枝管」と呼ばれる部分で、コンクリート躯体を破壊せずに取り換えられるものは交換可能です。従って、共用排水管から先の枝管部分を変更して、キッチンや浴室などの水回りの位置を変更することは可能です。
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事例9.分譲マンションで1階の専用庭を駐車場にしたい
マンションの1階部分に専用庭が付いている時、居住者の判断でそこを駐車場に変更することは可能でしょうか?答えは「×」。マンション1階の専用庭は「専用使用権」のある共用部分になります。部屋の所有者の都合で庭を駐車場に変えるといった用途変更は基本的にできません。
事例10.分譲マンションでルーフバルコニーを庭にしたい
広いルーフバルコニーがついている住戸で、そこに土を入れて、木を植えて、庭にすることは可能でしょうか?答えは基本的に「×」。ルーフバルコニーも「専用使用権」のある共用部分扱いです。ルーフバルコニーに土を入れることで荷重が変わり、構造上問題になる可能性がありますので、基本的に居住者の判断でできるリフォームではないと考えてください。
もしルーフバルコニーでガーデニングを楽しみたい時は、植木鉢やコンテナに植物を植えて、大規模修繕などでメンテナンスが入るときには鉢ごと移動できるようにしておきましょう。
分譲マンションのリフォームでは騒音に気を付けて、ご近所への挨拶も忘れずに
分譲マンションのリフォームで要望の高い10の事例を元に、できる?できない?を見て参りました。マンションは多数の住戸が集合して床・壁・天井などの構造体を共有しており、そのような共用部分は勝手にリフォームできないという制約があります。また、バルコニー、ルーフバルコニー、専用庭といった「専用使用権」のある共用部分にも要注意です。そういった決まりさえ守れば、比較的自由にリフォームを楽しむことが可能です。最後に、リフォーム工事の際には資材搬入、作業場所などで、エントランスホール、廊下、エレベーターなど共用部分を使用します。また、工事の際に出る音などで少なからずご近所に迷惑をかけることになります。
マンションは多くの世帯が住む集合体であることを念頭に、近隣の方になるべく迷惑にならないよう計画を立てることはもちろん、リフォームが始まる前には近隣住戸への挨拶を忘れずに行うようにしてください。
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