玄関から子ども部屋、この動線がカギ
母親が息子の帰宅に気がつかない、それはリビングでチャットに夢中になっていたことも原因だと思いますが、子どもの気配を感じにくい間取りだったことも一つの原因だったといえるでしょう。原作マンガにははっきりした間取りは載っていませんが、少年の目から見た家の廊下のイラスト(下図)から、少年の家はマンションでは一般的な「田の字プラン」であることがわかります。玄関を入ると廊下があり、その廊下を中心にリビング、個室や洗面、トイレなどが左右に配置されます。玄関扉を開けた時見えるのは細長い廊下と壁につく数個の扉です。
家の玄関を入った加害少年の目から見た家の内部(イメージ)。少年にとって正面のリビングドアの向こう側にいる母親までの距離は、とてつもなく遠い。原作では左手前の扉が少年の部屋という設定。 |
【図1】典型的な田の字プラン例。廊下を中心に左右に個室が並ぶ。マンションでポピュラーな間取り。 |
このお話の中で、加害者少年は母親に気がつかれずにシャワーを使ったり、子ども部屋に入り、また外に出ていくという行動をしています。原作を読んでいて「気がついてあげて!」と願った人もきっとたくさんいることでしょう。
コミュニケーションがとれる住まいのあり方
最近では、家族の絆を強め、コミュニケーションを取れる間取りに人気があります。例えば戸建住宅では……リビングに階段を設けて子どもが必ずリビングを通る動線にする、子ども部屋を完全な個室にせずカーテンやパーティション、可動家具などの簡易な間仕切りで空間を緩やかに区切る、吹き抜け空間の周りに個室を配して家族がお互いに存在を感じ合えるようにする、など。以上のことは間取りがほぼ決められているマンションでは難しく感じますが、マンションの典型的な田の字プランでも家族間コミュニケーションが取れるようなくふうができると思います。
次のページで典型的なマンション田の字プランでコミュニケーションを取るには?を見てみましょう。