不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

不動産の売買における「危険負担」とは?

購入したマイホームが引き渡し前に燃えたり倒壊したりすれば、その契約はいったいどうなるのでしょうか? 万一の場合における「危険負担」について、しっかりと理解しておきましょう。(2017年改訂版、初出:2002年8月)

執筆者:平野 雅之

【ガイドの不動産売買基礎講座 No.17】

通常の不動産売買取引では、契約を締結してから実際に土地や建物の引き渡しを受けるまでに数週間~数か月がかかります。もし、この間に購入した建物が燃えてしまったら、その損害を誰が負担することになるのでしょうか?

このような事態における処置を定めているのが「危険負担」です。

実際に危険負担の対象となるのは「売主または買主のいずれの責にも帰すことのできない事由により目的物の一部または全部が滅失もしくは毀損(きそん)した場合」であり、当事者どちらかの過失や故意による場合は別問題です。

具体的には、隣家の火事による類焼や、何者かに放火された場合、地震や自然災害による家屋の倒壊や流失、土地の流失や陥没などが挙げられるでしょう。

ところがこの「危険負担」について、民法では怖い決まりになっているのです。

「危険負担の債権者主義」といい、たとえ売買対象の建物が無くなってしまっても、債権者(買主)は売買代金のすべてを支払わなくてはならず、それに対して売主は損害賠償も、代わりの建物を用意する必要もありません。

このままでは現実にそぐわない点も多いため、不動産の売買契約書では民法と異なる特約をします。そして、民法よりも特約が優先的に適用されることになるのです。

危険負担の特約では「(上記のような場合の)損失については、引き渡し日の前日までは売主、引き渡し日以降は買主の負担とする」としたうえで、「買主が本契約を締結した目的を達することができない場合には本契約を解除することができる」という「債務者主義」に変更します。

この場合、毀損が軽微であれば売主の費用負担で修理してから引き渡すこともできますし、もともと買主が既存の建物を取り壊すつもりで契約したのであれば、その建物が災害で滅失したとしても買主の目的は果たせますから契約解除の必要はありません。

運悪く売買契約のタイミングで、この危険負担が適用されるような事態になることは滅多にありませんが、万一の場合を考えて対処することは大切です。

あなたが買主のとき、目の前に提示された売買契約書にこの特約(通常は特約とは書かれていません)がなければ、契約の延期や中止を求めることも必要でしょう。


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