不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

違反建築物と既存不適格建築物はどう違う?

違反建築物と既存不適格建築物は何が異なるのでしょうか。それぞれの違いと法的な取り扱いについて知っておきましょう。(2017年改訂版、初出:2002年12月)

執筆者:平野 雅之

【ガイドの不動産売買基礎講座 No.36】

建築基準法には建築物の大きさや用途についてさまざまな規定が設けられていますが、これらの規定(制限)に適合せずに建築されたものは「違反建築物」となります。

具体的には、建ぺい率超過、容積率超過、各種斜線制限の違反、用途制限違反、接道義務違反などのほか、建築基準法上の手続き(建築確認申請など)を行なわずに建築されたもの(無確認建築)も「違反建築物」とされます。

さらに、建築後の増改築工事や用途変更などによって規定に適合しなくなった場合も「違反建築物」であることに変わりはありません。

それに対して、建築当時には各種の規定に適合していたものの、その後の法令改正などを原因として現在の規定には適合しない状態となったものが「既存不適格建築物」です。

指定容積率が小さくなった場合などが考えられますが、とくに近年、マンションの建替えをめぐり問題となっているのが、昭和40年代半ばの容積率規制導入以前に建築された建物です。

それまでは建物の高さによる制限のみだったため、現在の容積率制限を超えて建築されているマンションが少なくありません。そのため、建替えをすると現行の建物より小さなものしか建てることができない、ということで建替えを断念せざるを得ないケースも多いようです。

「違反建築物」の場合には特定行政庁が、建築途中であれば工事停止命令、完成後であれば建物の除却や改築・使用禁止措置などの是正措置・命令や、建築士や建築業者への行政処分、さらに命令に従わない場合には強制執行をしたり、あるいは電気・ガス・水道の供給停止措置を講じたりするなど厳しい措置が決められています。

しかし、実際にはそのように建築物を取り締まったり、調査を行なうこと自体が難しく、とくに都市部では建築中の建物で第三者からの通報を受けないかぎり、工事停止命令を受けることもほとんどありませんでした。

そのため以前には建売住宅でも注文住宅でも、容積率オーバーなどの違反が当たり前のように行なわれており、「違反をした大きな建物でなければ買わない」と自ら希望するユーザーもいたほどです。

ところが、近年は法を遵守して完成後の検査済証まで取得しないと住宅ローンの融資をしない金融機関が大半となり、違反建築物はあまり見かけないようになりました。

「既存不適格建築物」では現況のまま使用するかぎり是正命令などの対象外ですが、建替えの際に現行の建物と同規模のものが建てられないことでは「違反建築物」も「既存不適格建築物」も同じです。

一戸建て住宅の中古市場には、当然のように違反が行なわれていた頃の建物が数多く出回っていますから注意しなければなりません。


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