不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

土地区画整理法と土地売買のポイント

土地区画整理事業地内の土地売買では「仮換地」や「従前の土地」など、あまり聞き慣れない用語が出てきます。分かりにくい面もある土地区画整理法ですが、その主なポイントを知っておきましょう。(2017年改訂版、初出:2003年6月)

執筆者:平野 雅之

【ガイドの不動産売買基礎講座 No.55】

古くからある住宅地や、雑然と宅地開発が進められてきたようなところでは、細街路が入り組んでいたり、それぞれの土地の形がいびつになっていたりすることがよくあります。また、そのような街区ではライフライン設備の改善や整備がスムーズに進まないことも多いでしょう。

そのような街区で、宅地利用の増進や公共施設の整備改善を目的として、土地の区画形質の変更や道路・公園などの整備を実施するのが「土地区画整理事業」で、都市計画区域内の土地において施行されます。

土地区画整理法や、それに基づく事業の規定を細かく説明するとかなり長くなりますので、ここでは土地や住宅の売買に関連するポイントに絞って説明することにしましょう。


一定の行為が制限される

土地区画整理事業施行区域内において、事業施行の障害となるおそれのある、土地形質の変更や建築物の新築・増築・改築などをしようとする場合には、あらかじめ都道府県知事や(事業の種類により)国土交通大臣の許可を受けなければなりません。


売買対象は「従前の土地」、使うことができるのは「仮換地」

土地区画整理事業では、自分の使える土地(使用収益といいます)の位置や形が変わります。一部には変更されないケースもありますが、いずれにしてもその変換が一瞬にしてできることはあり得ません。

事業完了までは長い期間を要するのが普通ですから、換地計画に基づいて仮の指定がされます。それが「仮換地」です。

「仮換地」が指定されると、その後に使用収益ができるのは仮換地の土地となります。その代わり、今まで使っていた土地(「従前の土地」といいます)は使用収益することができなくなることをしっかりと理解しなければなりません。

土地区画整理事業施行中の土地を売買するとき、その対象となるのは「従前の土地」です。この場合、所有権の移転登記をするのも、ローンを借りたときの抵当権設定登記をするのも「従前の土地」です。しかし、従前の土地を買っても実際に使用収益できるのは仮換地なのです。


区画整理後の土地は狭くなる!

一定の区域内で個々の土地を再配置し、道路や公園などを整備するため、区画整理後の土地(事業施行中の仮換地)は従前の土地よりも狭くなります。ただし、利便性や区画条件が向上することにより、土地自体の価値は上がるものとされています。

この場合、すべての土地を平等にすることは事実上不可能ですから、区画の条件に応じて清算金の交付または徴収の対象となることがあります。


換地処分で完了する

土地区画整理事業がすべて終わると「換地処分」の公告がなされ、法務局では土地の地番を新たに振って登記を直します。原則として、仮換地と換地処分後の土地は同じものです。

この登記が済んだ時点で、ようやく所有権対象の土地と使用収益できる土地が一致することになるのですが、その段階ではすでにかなりの数の家が建ち並んでいることも多いでしょう。


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