不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

窓を開ければ……隣家のお部屋!(2ページ目)

せっかく買うなら綺麗な夜景が見える部屋!と思っても、現実は窓を開けたらお隣さんの壁や窓しか見えないなんてこともあるでしょう。隣家との間隔について、都市部の住宅実情とそのルールを写真を交えて解説します。(2014年改訂版、初出:2003年7月)

執筆者:平野 雅之


民法ではこうなっている

建築に関するさまざまな規定は建築基準法に定められていますが、民法でも「相隣関係」として建築に関するルールを定めた部分があります。

隣家との距離

民法の規定ではこの程度の間隔が保持される

まず、原則のルールとして、建物を建てるときには敷地境界線から50センチメートル以上離さなければならないことになっています。つまり建物同士の間隔は1メートル以上となるように定められているわけです。

しかし、これは誰もが必ず守らなければならないというルールではなく、お互いの合意があればその間隔を狭くすることができます。

隣家との密着

古い民家では隙間がない例もある

また、その地域で異なった慣習があるときにはその慣習に従うとも定められています。建物同士を隙間なく密着させて建てるのが当たり前のようになっている地域もありますが、昔からそのような慣習があるのでしょう。

なお、民法では敷地境界線から1メートル未満のところに隣家の宅地などを眺めることのできる窓や縁側(ベランダを含む)を作ろうとする場合には、目隠しをつけなければならないとも定めていますが、これも異なる慣習などがあればそれに従うことになります。


建築基準法ではこうなっている

第1種低層住居専用地域または第2種低層住居専用地域内で、外壁後退距離(1メートルまたは1.5メートル)が定められた場合には当然それに従わなければなりません。また、「風致地区」に指定された区域では、その種別により外壁後退距離が定められています。

それ以外にも「建築協定」などで敷地境界線と建物外壁の距離が定められている場合もありますが、とくに規定のない一般の住宅地ではどうでしょうか?

間隔のない建売住宅

狭い間隔で建てられた建売住宅

意外に思われるかもしれませんが、建築基準法では敷地境界線と建物の間隔について何ら規定がないのです。

正確にいえば規定がないわけではなく、防火地域または準防火地域内で外壁を耐火構造にすれば「外壁を敷地境界線に接して建築できる」としています。

防火地域または準防火地域内で構造条件を満たせば、隣地境界線に接して(つまり間隔ゼロで)建てられるのですから、5センチや10センチの間隔でも建築基準法上は当然にOKです。

隣家の窓とバルコニー

窓とバルコニーが接近した例

言い換えれば、敷地境界線と建物外壁との間隔は建築確認の審査対象ではなく、境界線ギリギリに建てたとしてもそれ自体は違反建築になりません。

ただし、役所がまったく知らんぷりというわけではなく、建築紛争予防の見地から建物間隔をあけるように指導をしたり、隣地所有者の同意書を提出させているところもあるようです。

なお、建物の規模によっては自治体ごとの条例や指導要綱などで、空地や境界線からの距離についての基準が定められている場合もあります。

専門的な話になりますが、民法の規定と建築基準法の規定との関係について、建築基準法第65条が民法第234条1項の特則であり建築基準法の規定が優先するという説(特則説)と、両者は無関係で建築基準法の要件を満たしてもなお隣人との間では民法が優先するという説(非特則説)が対立していましたが、平成元年の最高裁判例で「特則説」をとることとなりました。


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