不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

抵当権と不動産の売買(2ページ目)

住宅ローンを借りるとほとんど例外なく登記される「抵当権」、および事業資金貸付などで登記される「根抵当権」について、その概要と住宅を売買するときにおける取り扱いを説明します。(初出:2003年10月)

執筆者:平野 雅之


売買時における抵当権の取り扱い

中古物件を売買する場合には、前の所有者(売主)が住宅ローンを借りていて、抵当権が設定されていることが大半です。このとき抵当権をそのままにして物件を引き渡すことは、よほどの特殊事情がない限り行なわれません。つまり、通常の取引であれば最終残金支払い時に所有権移転登記の申請手続きと抵当権の抹消登記の手続きを同時に行ない、引き渡しが完了します。

売主が物件を売り出す前に抵当権を抹消しておく…などとする解説しているものも見受けられますが、それはレアケースであり、大半は買主から受領する売買代金によって金融機関などへ返済をし、抵当権の抹消手続きが行なわれます。

一方で、バブル後における物件価格の下落により、現在の相場で売却をしても住宅ローンの残債(残高)を返済できないケースが多くなっています。このとき、売却代金をすべて金融機関に返済しても、金融機関側が抵当権の抹消に応じない可能性もあるでしょう。

そこで、買主に対するローン特約(ローンが借りられなければ白紙解除する)とは全く逆の立場で、「金融機関が抵当権の抹消に応じない場合は白紙解除する」という特約条項を売買契約に盛り込むことがあります。売買契約前に事前交渉を行なって金融機関と話がつけば良いのですが、実際に買主が現れて売買金額が確定した後でなければ話し合いに応じない金融機関もあるため、仕方がありません。


根抵当権とは?

これまでみてきた抵当権は、一つの借り入れに対するものです。つまり、一度借りたものを全額返済すれば、抵当権の役目もそれで終わりです。しかし、自営業者の事業資金などでは上限の枠(極度額)を定めて、その範囲内で何度でも借りたり返したりを繰り返すことのできる契約があります。このようなときに設定されるのが「根抵当権」です。

根抵当権の場合でも、売買時に抹消することは抵当権と同じです。しかし、抵当権の場合には債権額と借り入れ時期、経過年数でおおよその残債が推測できるのに対して、根抵当権の場合には可能性のある最大額が分かるだけです。売主と根抵当権者に確認するまで実際の金額が分かりません。売主の「そんなに借りてないよ~」という言葉を鵜呑みにして売買交渉を進め、いざふたを開けてみたらびっくり、なんてこともありがちです。


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