農地法の本来の目的は「耕作者が自ら農地を取得することを促進し、その権利の保護と優良な農地の確保や生産力の増進を図ること」です。
しかし、1952年(昭和27年)に法律が制定されてから現在まで60年あまりの間に社会的背景も大きく変わり、住宅用地への転用や他の事業による土地利用なども考慮しなければならない状況になっています。
今回は農地法によるさまざまな制限のうち、農地を宅地などに転用する場合と、農地を宅地などに転用する目的で権利の移動(売買や地上権の設定など)をする場合における制限を中心にみていくことにしましょう。
農地の転用の制限 (農地法第4条)
同一事業の目的に供するために4ヘクタール(4万平方メートル)を超える農地を農地以外のものにする場合には、都道府県知事経由で農林水産大臣の許可を受けなければなりません。それ以外の転用(4ヘクタール以下の場合など)は、農業委員会経由で都道府県知事の許可を受けなければならないことになっています。
ただし、その農地が市街化区域内にあれば、あらかじめ農業委員会へ届け出をするだけで足ります。また、土地収用法その他の法律によって収用または転用した農地をその目的に沿って利用する場合にも許可は必要ありません。
農地などの転用のための権利移動の制限 (農地法第5条)
農地を農地以外のものにするため、または採草放牧地を採草放牧地以外のもの(農地を除く)にするために、所有権の移転、地上権その他使用収益を目的とした権利の設定・移転をする場合には、農業委員会経由で都道府県知事(4ヘクタール以上の場合は都道府県知事経由で農林水産大臣)の許可を受けなければなりません。ただし、転用のみの場合と同様に市街化区域内の農地または採草放牧地であれば農業委員会へ事前の届け出をするだけで足り、土地収用法その他の法律によって収用された場合などにも許可は不要です。
市街化調整区域内の農地などの場合
農地法といっても市街化区域内の農地を宅地目的で売買するかぎり、事前に届け出をする手間が増えるだけで、とくに問題はありません。しかし、市街化調整区域内の農地を宅地に転用する目的で売買する場合には、農地法以前に開発許可などによって建物が建てられるかどうかを確認することが必要です。
仮に建物が建てられるときであっても、市街化調整区域内の農地を売買する場合には、売買契約を締結しても「転用の許可」を受けるまではその効力がない(停止条件付契約)ことに留意しなければなりません。
また、区域の指定にかかわらず、農地を農地のまま(または採草放牧地を採草放牧地のまま)で権利の移動をする場合には、一部の例外規定を除き農業委員会または都道府県知事の許可(農地法第3条)が必要です。
さらに、用途地域の定められていない農地を転用することなく取引する場合には、宅地建物取引業法の適用がなく、法的な保護があいまいです。このような農地を取得するケースは限られているでしょうが……。
なお、農地の売買や貸借にあたって、1993年制定の「農業経営基盤強化促進法」の適用がある農地では、前述の許可などが不要となるケースもあります。
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