消費税と印紙税の関係
売買金額や領収金額に消費税が含まれる場合には、その消費税額が明記されていれば、消費税額を除いた本体価格を契約書などの記載金額とみなして印紙税額を判定します。しかし、単に「消費税を含む」などの記載しかなければ、消費税額を含めた総額により印紙税額が決定されます。ただし、工事請負契約書の場合は若干取り扱いが異なるケースもあります。
契約書などのコピーは非課税だが……
契約当事者が署名・押印した契約書を単にコピーしただけの文書は非課税です。しかし、コピーしたものに「原本と相違ない」とか「謄本である」「写しである」などと証明する契約当事者のサインなどを書き込むと、途端に課税文書へ変身します。原本とコピーの間に割印をした場合も同様です。また、最近はかなり少なくなりましたが、カーボン紙を使い契約書に署名した場合、カーボン複写された署名がある契約書はすべて課税文書とみなされることもあります。それが、契約の成立を証明する目的と判断される場合などです。
なお、自分が所持する文書に自分だけのサインを書き込んだり印鑑を押したりしても、それは何ら証明力をもたない文書であり、課税文書にはなりません。
契約書が1通の場合の留意事項
ここからはやや実務者向けの話になりますが、印紙税を節約する意図で売買契約書を1通だけ作成し、当事者の一方が原本を保管、他方がコピーのみを所持するケースもときどきあります。この場合、売買契約自体に問題はなく、印紙税法上も問題はないでしょう。しかし、その際に留意しなければならないのは宅建業法第37条による書面の交付義務です。
通常は売買契約書で代用しているのであまり意識することはないでしょうが、第37条では契約内容などを記載した書面に宅地建物取引士が記名・押印したうえで、各契約当事者(宅建業者が一方の当事者であればその相手方)へ交付することになっています。
そうすると、たとえば宅建業者が売主で媒介業者を介さずに直接買主と契約するのであれば、作成した1通の売買契約書原本を買主に渡し、業者がコピーを持てば問題ありません。ところが、媒介業者が介在するときには、当事者の一方に対して第37条の義務を果たしていないとみなされる余地があるでしょう。
このような事例に対して行政側がどのように判断するのか、あるいはこのような事例で実際に業法違反に問われた事例が過去にあるのかどうか定かではありません。
しかし、売買契約書を1通にする場合に、曖昧さを残さずに万全を期すのであれば、売買契約書とは別途に第37条書面の作成・交付をしておくべきでしょう。
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