不動産を購入したり、新築したり、あるいは相続や贈与によって取得したりすると、しばらくして(数か月~1年後)突然、税務署から「お尋ね」の文書が送られて来ることがあります。
これには「新築、買入れまたは賃借された家屋等についてのお尋ね」または「お買いになった資産の買入価額などについてのお尋ね」などと記載されています。
しかし、不動産を取得した人全員に対してこの文書が来るわけではなく、ある程度無作為に抽出された人、それと税務署から疑いを持たれた人に対して送られるものです。
あなたが不動産を購入したときに「お尋ね」が送られて来る可能性も十分にありますから、その対処法も知っておきましょう。ただし、「お尋ね」に関する取り扱い基準などは、すべてが明らかにされているわけではありません。
お尋ねの目的は?
「お尋ね」では、住宅の購入価格やその支払い方法、購入先、前年の所得金額、購入資金の調達方法などを回答することになっていますが、それらによって未申告の贈与がないか、脱税による隠匿資金がないかなどがチェックされます。本人の申告所得や給与収入などと照らし合わせ、不釣合いなほど高額な住宅を購入していたり、返済に無理を生じるような住宅ローンの借り入れをしていたりすれば、当然ながら税務署は疑いの目を持つわけです。
また、購入した住宅に対する「売主の収入」や「媒介業者の手数料収入」などに申告漏れがないかどうかのチェックにも使われていることでしょう。不動産取引の相手側も絡んで来ることですから、虚偽の回答はいけません。
お尋ねに回答しないとどうなる?
「お尋ね」に対する回答は法律に定められた義務ではなく、回答しなくても何ら罰則規定はありません。しかし、税務署が少しでも不審に感じれば、さらに念入りな税務調査に発展してしまう可能性もあるため、やましいところがないかぎり正確にきちんと回答しておきたいものです。また、当初から税務署が不審をいだいた相手が回答しないと、何度も繰り返して「お尋ね」が送付される場合もあるようです。このようなときには、疑いを晴らすためにも速やかに回答するべきでしょう。
なお、納税義務の有無に関わらず、もし贈与税の申告漏れが発覚したとしても、それによって税務署が直ちに税金の徴収にやって来るわけではなく、まずは申告の指導(申告方法の説明)などが行なわれるようです。
お尋ねが来たときへの備え
購入資金の出どころについて、裏づけのある書類をしっかりと保管しておくことが必要です。自己資金であれば預金通帳や定期預金計算書、借入金であれば金銭消費貸借契約書(住宅ローンの契約書)、不動産その他資産の売却代金であればその契約書や明細書などです。また、親などから「借金」をして購入資金を調達した場合には、返済期間、返済方法などを記載した借用書(または契約書など)とともに、一定の利息を付して定期的に返済している事実を証明する何らかの書類を用意しておくことも必要です。
それらがないときには、たとえ当人同士は貸し借りのつもりでも、贈与とみなされることになりかねません。
ある日突然、税務署から「お尋ね」が来るとびっくりしてしまうかもしれませんが、その段階ではまだ税務調査や査察などではありませんから、落ち着いて対応してください。
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