■ 都市銀行は消極的?
「証券化ローン」 (買取型) では、金融機関が消費者に融資した住宅ローンの債権を住宅金融公庫が買い取って証券化し、それをさらに機関投資家などに売却するため、住宅ローン融資による利益 (金利・手数料) は、金融機関・住宅金融公庫・投資家が分けることになります。
自前の資金で (長期固定金利型住宅ローンを) 融資できない金融機関にとっては、資金調達面でのメリットも大きいでしょうが、資金力のある金融機関にしてみれば、これまでの方式で融資するよりも利益が減りますから、あまり積極的になれない理由のひとつでしょう。
そればかりか、三井住友銀行ではキャンペーン商品 (8月31日借入れ分まで) ながら、年2.98%の長期固定金利型住宅ローン (最長20年、保証料外枠方式) も売り出しています。同行の 「証券化ローン」 は金利が4.01% (7月実行分) ですから、単純比較はできないものの、チカラの入れかたが違うのは明らかですね。
長期金利の上昇で変動金利型住宅ローンに対する不安感も高まるなか、他の都市銀行などでも長期固定金利型住宅ローンにチカラをいれ、優遇された金利を適用すれば 「証券化ローン」 よりも有利なものがいくつか出てきています。
大手都市銀行が各行とも住宅ローン事業を強化し、さまざまな金利優遇キャンペーンなどを打ち出してシェア獲得競争をしているなか、 「証券化ローンを取り扱ってる場合じゃないよ」 というのが本音かもしれませんね。
■ 「証券化ローン」 の次なるステップ
「証券化ローン」 には、意外と知られていないもうひとつの側面があります。それは 「既存の金融機関でなくても住宅ローンを融資できる」 ということ。たとえば、オールアバウト不動産 (もちろん実在しません) が自社の分譲物件購入者に対して、住宅ローンをセットで融資することができることになります。言い換えれば、営業担当者ひとりで物件の売買契約と住宅ローンの契約とを同時に処理することができるわけです。
それが一般化するまでにはまだ何年もかかるでしょうが、実際に大手住宅メーカーやマンションデベロッパー、ノンバンクなどが新規参入を検討しているようですし、前記の 「日本住宅ローン」 も出資会社の分譲物件購入者に対する融資を行っています。
住宅メーカーやデベロッパーなどが自ら 「証券化ローン」 を取り扱えば、結果として必要な営業経費も少なくて済み、既存の金融機関よりも低い金利設定が可能となります。さらに分譲による利益で住宅ローン経費もカバーすることになれば、金融機関の競争力低下は免れないことでしょう。
つまり、 「証券化ローン」 が広く一般に支持され、住宅メーカーやデベロッパーなどがこぞって 「証券化ローン」 の取り扱いを始めれば、住宅ローンを収益のひとつの柱としている金融機関にとっては、死活問題にもなりかねないのです。
「証券化ローン」 のシェア拡大が自らのクビを絞めることになるのだとしたら、既存の金融機関が 「証券化ローン」 を積極的に取り扱わないのも予想できる話ですね。
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