住宅購入の費用・税金/住宅ローンのしくみと選び方

「証券化ローン」 が低調なワケ

住宅金融公庫による直接融資が平成18年度末までに廃止されるのに伴い、それに代わる長期固定金利型住宅ローンとして登場した「新型住宅ローン:証券化ローン」は予想に反して低迷しています。その理由は・・・。

執筆者:平野 雅之


この記事の1年後の検証は・・・。
証券化ローンが好調(?)なワケ



  〔1,489戸〕
いったい何の戸数なのか分かりますか?

これは分譲中の超大型マンション一棟の総戸数などではありません。先ごろ住宅金融公庫から発表された、平成16年度第1四半期 (平成16年4月1日~6月30日) における 「新型住宅ローン (証券化ローン)」 の受付戸数です。

新型住宅ローン (証券化ローン) は、 (この記事の翌年) 平成17年1月から 「フラット35」 と呼ばれるようになりました。

この数字を見て 「おやっ」 と思うのは、不動産関連の仕事をしている人か、記憶力のよい消費者のかたでしょう。住宅金融公庫による平成16年度目標 (予算) は8万戸 (買取型7万戸、保証型1万戸) となっています。年間8万戸の目標に対して、四半期とはいえ1,489戸。 「証券化ローン」 が順調に伸びていると判断する人はいないでしょうね。

では、なぜ 「証券化ローン」 が低調なのでしょうか? 「証券化ローン」 についての商品知識などは、All About 【住宅ローン】 のガイドにお任せするとして、今回はこれが伸び悩んでいる背景を考えてみることにしましょう。


取り扱い金融機関は増えたが・・・


平成18年度末までに住宅金融公庫による直接融資制度が廃止されることになっています。それに代わる長期固定金利型住宅ローンの切り札として、平成15年10月1日にスタートした 「新型住宅ローン (証券化ローン) 」 ですが、平成15年度の実績も805戸 (目標は1万戸) と極めて低調なものでした。

多くの金融機関が取り扱いを始めたが、件数は目標を大きく下回っている。当初はこの制度に参加する金融機関も少なく、都市銀行でも、みずほ銀行とUFJ銀行の2行だけでした。その後、今年 (平成16年) 4月からは融資基準が大幅に緩和されるとともに、すべての都市銀行で取り扱いを開始し、地方銀行や信用金庫などでも取り扱いが増えて、いよいよ本格的に普及すると考えた人も多かったようです。

しかし、その結果は冒頭のとおり。平成15年度が半年間で805戸、平成16年度が3か月間で1,489戸ですから、たしかに申込み件数が伸びていることは伸びていますけどね。

平成16年7月21日現在の取り扱い金融機関は、都市銀行が6行、地方銀行と第二地方銀行が73行、その他、信用金庫・信用組合・保険会社・ノンバンクなどで、合計154機関となっています。

各金融機関ごとの取り扱い件数は明らかではありませんが、 「証券化ローン」 の取り扱いを目的として設立された 日本住宅ローン (日立キャピタル、積水ハウス、大和ハウス工業、住友林業、積水化学工業が出資) による取り扱い比率が高い可能性もあり、実際にはまだほとんど取り扱ったことのない金融機関もあることでしょう。

「証券化ローン」 が伸び悩む理由として、まだ消費者に十分な認知がされていないことや、住宅金融公庫による直接融資も並行して行われていることを挙げることもできますが、決してそれだけが原因ではありません。

≪追記≫ 住宅金融公庫が平成16年10月に発表したところでは、制度開始 (平成15年10月1日) から平成16年9月までの1年間の実績が3,474戸にとどまりました。これは当初計画 (約62,500戸) の約5.5%と極めて低い数値であり、金額も803億円で当初計画 (1兆2,500億円) の約6.4%となりました。


都市銀行が積極的でない理由は次ページで



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