以下の記事は、住宅性能表示制度が導入されてから約4年が経過した平成16年(2004年)当時の状況を考察したものです。

その後の住宅性能に対する消費者の意識の向上とともにいくぶん普及が進み、設計住宅性能評価書の交付が約266万戸、建設住宅性能評価書の交付が約203万戸(平成27年12月末時点)となった現在とは異なる部分もあります。

しかし、その普及率は毎年2割前後で推移しており、住宅性能表示制度が十分に活用されているとはいえません。10年あまり前の調査結果ですが、住宅購入時の関係書類に対する消費者の捉え方として、現在でも参考にできる部分は多いでしょう。



国土交通省は平成16年(2004年)12月28日に「平成15年度住宅市場動向調査(住宅性能表示アンケート)」の結果を公表しました。

このアンケート調査では、約9割の居住者が「住宅性能表示制度を知っている」(内容もだいたい知っている:52.9%、名前くらいは知っている:35.0%)と回答しています。

家族と住まい

家族のみんなが安心して暮らせる住宅を購入したいが……

しかし、これをみて「住宅性能表示制度が十分に浸透した」と考えたら大きな勘違いでしょう。

これは平成15年中に「建設住宅性能評価書を交付された住宅に、実際に居住している世帯」を対象に実施したものなのです。

性能評価住宅を取得(購入または建築)して入居しながら、9.4%の世帯が「まったく知らない」と回答していることのほうが問題かもしれません。

その原因として、分譲業者や仲介業者による説明不足などもあったことでしょう。しかしその一方で、買主が重要事項説明などを受けるときに極度の緊張状態に陥ってしまい、説明されたことをまったく覚えていないという状況も少なからずありそうです。

≪国土交通省「平成15年度住宅市場動向調査(住宅性能表示アンケート)の結果について」≫

それはさておき、同調査結果では気になる点がいくつかありましたので、数多い調査項目の中からいくつかをピックアップしてみましょう。

なお、繰り返しになりますが、以下は「性能評価住宅を取得(購入・建築)して入居した世帯」に対するアンケート結果であることを念頭において読み進めてください。


マンション居住者は認知不足?

住宅性能表示制度を「内容もだいたい知っている」と回答したのは、戸建住宅居住者が61.0%、マンション(アンケート上の分類は「共同住宅等」)居住者が42.5%となっています。戸建住宅では「注文住宅」も含んでいるため、全体的に制度への関心も高いようです。

住宅性能評価料金の認知度になるとさらに極端な差となり、戸建住宅居住者が51.2%だったのに対し、マンション居住者ではわずか5.4%にとどまります。

ちなみに、アンケート結果の中では明示されていませんが、戸建分譲住宅(建売住宅等)の居住者における住宅性能評価料金の認知度を他のデータから逆算すると約18.5%になりました。


性能評価住宅であることを知らなかった?

住宅性能表示制度について「内容もだいたい知っている」と回答した世帯のうち4.9%、「名前くらいは知っている」と回答した世帯のうち12.8%が、自分の取得した住宅について「評価住宅であることを知らなかった」と回答しています。

また、住宅性能表示制度を「知っている」という世帯のうち17.0%は、住宅供給者等から「特に説明を受けていない」と回答しています。

実際に説明を受けなかったのか、あるいは説明を受けたこと自体を忘れてしまったのかは定かでありませんが、契約のときに明確に意識されていなかったことは確かでしょう。


性能評価住宅であることはあまり重視されていない?

住宅取得時に重視した項目(複数回答)は「住宅の広さ・間取りプラン」が最も多く58.5%、続いて「価格」が56.3%、「生活の利便性」が49.1%であるのに対し、「住宅の性能」は38.7%と相対的に低く、「住宅性能表示制度の活用」についてはわずか7.5%にとどまっています。

一部に欠陥住宅など重大な問題があるとはいえ、大半は一定水準以上の住宅が供給されている現在ですが、性能よりも広さや価格が重視されるのはいつの時代でも同じなのでしょうか。


高齢者等への配慮に関することの重視度は最低!

それぞれの性能表示項目に対する重視度の調査で最低だったのが、高齢者等への配慮に関することです。「あまり重視しなかった」が30.8%、「全く重視しなかった」が5.8%でした。

それに対して「重視した」は24.0%となっており、別の設問で「65歳以上の高齢者・要介護者が同居」している世帯が16.9%だったことを考えると、高齢者などの同居しない世帯が自分たちの将来を見越してこれを「重視した」割合はかなり少ないようです。


書類の保持状況は悪い!

性能評価住宅に居住しているのにも関わらず、「設計住宅性能評価書」を手元に持っていない世帯が14.1%、「建設住宅性能評価書」を手元に持っていない世帯が14.8%もあったようです。

さらに、「住宅紛争処理支援センターからのご案内」を受け取っていない世帯が36.7%、「指定住宅紛争処理機関のご案内」を受け取っていない世帯が36.0%にも。

いざというとき(紛争時)の迅速な処理が住宅性能表示制度の一つのメリットとされているのですが、この状態ではいろいろと心配になるでしょう。不動産業者をはじめ、関係機関における実務処理上の改善点が潜んでいるようにも感じられます。


住宅性能評価書があれば大丈夫……とは、いえない!?

住宅性能評価書を取得した物件ならすべて安心」と考えている人が多いかもしれませんが、決してそうではありません。

それを端的に示しているのが、不具合の発生状況に関する調査項目であり、住宅性能評価を受けて入居した後に「補修が必要となる不具合」が発生したとする住宅が、全体の56.6%と過半数を占めています。

雨漏りのイラスト

新築住宅に入居してすぐに雨漏りでもしたら最悪!

不具合の部位で最も多いのは「開口部・建具」となっていますが、建物構造上で重要な「基礎」や「屋根」などの不具合もあったようです。

また、不具合の内容は多い順に「作動不良」「はがれ・外れ」「隙間」などとなっていますが、「雨漏り」「漏水」「傾斜」など、新居で頭を抱えてしまうような不具合も発生しているようです。

これらの結果が住宅性能評価書を取得していない物件と比べてどうなのかは、比較できる調査データがないために何ともいえませんが、少なくとも「住宅性能表示制度によって飛躍的に改善された」ということができないのは確かでしょう。

これは住宅性能表示制度が住宅のすべての部位を網羅するものではなく、また、工業製品に例えるなら、搭載部品の性能が一定水準以上のものであることを評価しても、その組み立て精度を検定する制度ではないことに起因するのかもしれません。

いずれにしても、現場で一つひとつ施工される住宅では、手抜き工事による欠陥住宅は論外としても、なかなか精密機器を製造するようにはいきません。不具合が発生したときに、素早く的確に対応してくれる業者の物件を選びたいものです。


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