不動産売買の法律・制度/不動産売買の法制度

ゴミ屋敷の存在は重要事項説明の対象なの?

購入しようとする物件の近くに「ゴミ屋敷」があったとき、その事実は「重要事項説明」によって宅地建物取引士から説明されるのでしょうか? また、不動産業者にはそれを調査する義務があるのでしょうか?(2015年改訂版、初出:2005年8月)

執筆者:平野 雅之


ときどきテレビなどでも取り上げられている「ゴミ屋敷」ですが、それが自宅のそばにあると困りものですね。



question
このような質問をしてよいのかどうか迷いましたが、住宅を購入するときの参考のために教えてください。いま自分が住んでいる場所の近くに、いわゆる「ゴミ屋敷」があり、テレビ番組でも取材していました。見た目や異臭の問題だけでなく、前の道路の通行も危険だということで(道路に崩れ落ちそう)、近所の小学生なども迂回して通っているようです。今度引っ越すときには、そのような建物が近くにない物件を選びたいのですが、「ゴミ屋敷」などは不動産業者の重要事項説明書の中で説明されるのでしょうか?
(東京都 匿名 20代 女性)



answer
その家の住人が周辺のゴミを拾い集めてきてしまったり、自宅のゴミを何年も捨てずにいたりして、敷地内いっぱいにゴミを溢れさせてしまう「ゴミ屋敷」ですが、個人の信条の問題などもあって、なかなか近隣の対応も難しいでしょう。

これを明確に禁ずる法律もなく、行政側でも苦慮しているケースが大半のようです。

少しゴミが目立つ程度なら近隣の人も我慢できる範囲かもしれませんが、周囲に危険を及ぼすほどになれば、その近くを避けたいと考えるのが普通です。

ゴミ屋敷の事例

美観上や衛生上の問題だけでなく、度が過ぎると通行の安全を妨げることも

さて、購入しようとする物件のそばにこのような「ゴミ屋敷」があった場合における宅地建物取引士重要事項説明義務ですが、物件に隣接するか極めて近いところに、“外見から明確に判断できるような” ゴミ屋敷があれば、当然ながら環境問題として説明対象になります。

また、物件の近くでなくても通学路や駅までの主要な通り道などに「周囲への影響が大きなゴミ屋敷」があることを、宅地建物取引士や不動産業者が “事前に知っていれば” やはり説明対象になるでしょう。

ところが、隣地などにゴミを集めている人が居たとしても、それが外見では分からないような場合には説明対象になりません。

また、「隣地の建物の室内にゴミが多い」などということを説明すれば人権侵害にもなりかねないほか、ましてや「隣の住人は変な人だから……」などという話は、明確な根拠や証拠、明白な危険性などがないかぎり、説明することはできないでしょう。

実際に多いと考えられるケースで、トラブルへ発展する可能性があるとすれば、上記の「説明義務があるケース」と「説明義務がないケース」の中間に位置する、グレーゾーンのものです。

購入しようとする物件の隣地や極めて近い敷地における「外見上で明らかなゴミ屋敷」であれば説明義務があるとしても、現地見学の際に購入者自身もたいていは気付くはずです。

ところが、少し見えづらい裏手の敷地だったらどうなのか、あるいは、どの程度離れたら説明義務がないのかなどに明確な規定はなく、さらにゴミ屋敷の程度もそれこそ千差万別なのです。


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