≪固定資産税と都市計画税の基礎知識≫ でも説明したとおり、固定資産税と都市計画税はその年の1月1日時点の所有者に対して1年分が課税されるものです。
しかし、住宅にかぎらず不動産の売買にあたっては、日割り計算に基づいて売主と買主で負担し合うことが慣例になっており、特殊な契約を除いて通常の売買では、ほぼ例外なく清算金のやり取りがされます。
今回は、この固定資産税と都市計画税(以下「固定資産税等」と表記します)の清算方法などについて、少し詳しくみていくことにしましょう。
清算金の法的な負担義務はない!
法的な義務はなくても、買主も日割り分を負担するのが慣例
かといって、買主がその負担を拒絶すれば、円滑な取引に支障を来たすだけです。
売買契約書の中にも、ほぼ例外なく固定資産税等の清算に関する条項が盛り込まれていますから、売買契約を締結した後、引き渡しのときになって買主がこれを拒絶すれば、債務不履行にもなりかねません。
不動産業者が介在せずに個人同士で売買をするようなときには、くい違いが生じないよう事前に明確な取り決めをしておくことが必要です。
日割り計算の起算日は2種類!
日割り計算には、1月1日を起算日にするケースと4月1日を起算日にするケースがあります。この日付についてもとくに決まりはなく、関東では1月1日を採用する不動産業者が多く、関西では4月1日を採用する不動産業者が多い傾向にあるようです。全国的にどうなのかは、残念ながらはっきりしません。
いずれにしても、日割り計算によって買主の負担分とされた金額分を買主から売主へ支払い、売主が実際の納税をすることが一般的です。また、媒介業者が売主と買主の双方からお預かりしたうえで、まとめて市町村等への支払いを済ませるケースもあります。
1月1日を起算日とした場合、1月1日から引き渡し日の前日までの分を売主の負担とし、引き渡し日から12月31日までの分を買主の負担とします。
同様に4月1日を起算日とした場合は、4月1日から引き渡し日の前日までの分を売主の負担とし、引き渡し日から翌年3月31日までの分を買主の負担とするわけです。
また、引き渡し日の当日分は買主の負担とするケースが大半でしょうが、売主側に含めるケースもあるでしょう。前述したとおり法律で決められた事項ではありませんから、どちらが正しいともいえないのです。
たとえば、固定資産税等の合計年額が10万円で、12月1日に物件の引き渡しをする場合を考えてみましょう。
1月1日を起算日とすれば、売主の負担分は〔10万円×334日/365日=91,507円〕、買主の負担分は〔10万円×31日/365日=8,493円〕となります。同じ条件で4月1日を起算日とすれば、売主の負担分は〔10万円×244日/365日=66,849円〕、買主の負担分は〔10万円×121日/365日=33,151円〕です。
一方、同じく固定資産税等の合計年額が10万円で、3月1日に引き渡しを行なう場合には、1月1日を起算日とすれば、売主の負担分は〔10万円×59日/365日=16,164円〕、買主の負担分は〔10万円×306日/365日=83,836円〕となり、4月1日を起算日とすれば、売主の負担分は〔10万円×334日/365日=91,507円〕、買主の負担分は〔10万円×31日/365日=8,493円〕となります。
この場合、4月1日を起算日としたほうが引き渡し時の買主負担は少なくて済むものの、5月頃になればすぐに1年分の負担義務が買主に生じる(ただし、請求は売主のところへ行ってしまう)ことに注意しなくてはなりません。
なお、売主と買主のそれぞれの負担額は、四捨五入によって十円単位や百円単位とすることもあります。
1月1日を起算日とする暦年方式は1月1日時点の所有者に対して課税されることを根拠とするものであり、4月1日を起算日とする年度方式は実際の納税期間が4月以降になる(課税標準となるその年の評価額は、自治体により異なる場合もありますが概ね4月1日に公示されます)ことを根拠とするものです。これについても、やはりどちらが正しいとも言えないのが実情です。
なお、1月1日と4月1日のどちらを採用するのかは、媒介業者または売主となる業者ごとに一貫性をもたせているのが通例であり、契約や買主によって、あるいは引き渡し日によって変更するようなことは原則としてありません。
ただし、1月1日を採用する業者と4月1日を採用する業者が共同で媒介をするような場合には、業者間のチカラ関係で決まることもありますが、たいていは契約書類作成業務を担当するほうの業者の方式になるでしょう。
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